追放されたバックパッカーは受難の時代を迎える
日々、猫。
第1話 追放されたバックパッカー
「おっ!!お前を追放する!!」
パーティーリーダーの男剣士がこちらを指差し、ギルドの酒場にてそう高らかに宣言した。
おいおい、なんで宣言する側が泣きそうなんですかね?
他の皆様は清々するわって顔してるのに…
はよ行けやぁ…幼馴染だからって名残惜しい感じ出すなって…
俺は軽く手を振って、元パーティーを見送った。
あーあ…この先どうしようと軽く考えながらエールをあおる。
前人未到のレベル10…そんな俺の職業はバックパッカー。
無限のインベントリを持ち、瞬時に出し入れ出来る…だけ。
…そう、戦闘にまっっったく!!と言っていいほど役に立たないのである。
高難易度ダンジョンアタックをメインとしている元パーティーとは方向性の違いで追放されたってわけだ。
いや、他のメンツが女性だらけっていうのもあったんじゃが…まぁそれは置いといて…
ジャーキーを齧りながら、ゆるーく考える。
サブ職業もマッパー…ダンジョンのマッピングを得意とする職業ゆえに…マジックアイテムの方が上位互換になってるっていうね…苦笑いしか出来んわ
まぁ全職業の初級スキルは取得してるし、レベル3~4の中級ダンジョンならなんとか…いやソロなら初級ダンジョン制覇が安定だなぁ…ぶっちゃけパーティーメンバーに加えてくれるとこなんてないからなぁ…
と考えつつ、支払いを終え寂しくなった懐を見て若干絶望する。
今夜は野宿だなぁ…と酔った身体で村の外に向かう。
村から外れた高台がちょうどいい感じだったので魔物よけの結界を形成し、テントを張って寝る準備をする。
うーん、最後に飲んだエールが効いてるなぁ…
少し広くなったテントに寂しさを覚えつつ寝袋に入ろうとする、がその時に外から叫び声と魔物の足音が響く。
あー…と寝ぼけた頭を掻きむしってテントの外に出る。
追いかけられた旅人?と追いかけ回してるドラゴン…あちゃーありゃレベル5のドラゴンだよ…災難だなぁ、てかよく生きてるなぁ。おっ、あのブレスを躱すかぁ
攻撃がかするたびにひぃ!と声をあげる旅人?
…俺の実力じゃぁ普通には助けられないので、大口径のボルトアクションライフルを担ぐ
息を整え、ライフルに魔力を通わす。
ライフルに彫られた魔力回路が起動し、マガジンに溜め込んだ膨大な魔力を消費。
付与魔法による強化が施される。
「弾道・弾速・威力…その他諸々付与完了…」
深く息を吸い込みトリガーを引く。
轟音と共に放たれた弾丸はドラゴンの頭をぶち抜いた。
…ふっ…俺の3日かけて作り上げた必殺の一撃はどうだい?
まぁ…幼馴染剣士はこんなコトせずとも一瞬で頭を切り落としてるんですけどねぇ!!
…泣いたわ。
『この金食い虫!!』
ぶっ放した後に幻聴が聞こえた気がした…まぁもう言われるコトがないのは少し寂しい気がするが…
一発金貨5枚相当(≒50万円)の弾丸をぶっ放したんだからまぁ…そう叫ばれても仕方ないっちゃ仕方ないけど、なら俺を戦力としてカウントしないで貰えますか?
一発ごとにメンテナンスが必要なライフルを収納し、旅人?に駆け寄る俺。
闇夜で見づらかったが…その格好…まさか…
旅人?「助かりましたぁ…」
風の噂で聖女が追放されたと聞いている。
多分それ、あれだ。
こいつだ。多分。
とりあえず、寝覚めが悪くなるので水筒をさっと手渡して踵を返す。
うん、関わったらアカンわ。
おばあちゃんも言ってた。厄ネタには近づくなって。
静かに優雅に全力で逃げる姿勢をとった俺の首元を引っ張る聖女。
「ぐえぇ!!」
せめて首はヤメロォ!!
聖女「あのぉ…出来れば村まで案内してほしいんですけど…ダメですかぁ?」
多分涙目で上目遣いで言っているんだろうが!!
俺は後ろを向いているし!!首元思いっきり引っ張られてて見えてねぇんだよ!!
聖女「…ダメですかぁ?…答えて下さい!!」
俺「なら!せめて首を離せ!!」
俺は締まった首から無理やり声を出して叫ぶ!
とんだ厄ネタに引っかかったもんだ…どうすりゃいいんだよ…
頭を抱えて悩む俺、助かったと安堵する聖女。
とりあえず村まで連れていけばいいんだ…ソレ以外考える必要はないんだ…!!
けれど、俺の受難はわりと始まったばかりだと俺のスキル群が警笛をならす。
うるせぇ…現実逃避してるんだから、逃避させろよヴァカ!
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