ハズレ支援職「踊り子」ですけど極めたらチートジョブ「アイドル」になりました

taqno(タクノ)

1章

第1話 祝福の儀

 私は今日、誕生日を迎えて十二歳になった。

 十二歳になった子供は住んでる村の教会に行き、祝福の儀を受ける。

 そうすることで、自分に合った『職業ジョブ』を神様から授かるのだ。

 つまり祝福の儀とは、子供から大人になる第一歩とも言われている。


 十二歳で大人って、ちょっと早すぎると思うけど。


 ただ、私はいち早くジョブを手にして冒険者として活躍したくてたまらなかった。

 冒険者は魔物を狩ったり、人から頼まれた依頼をこなす人たちのことだ。

 人の役に立ちたいって小さい頃から願ってた私にとって、冒険者はまさに目標なのだ。

 でも私が住んでる村には冒険者ギルドはないから、冒険者になるためには村を出ないといけない。

 そうなると、お父さんお母さんとはお別れしなきゃいけない。それはちょっと、寂しいかも。


 だけど親との別れも大人になるためには必要なことだもん。我慢しなくっちゃ。




「それではこれからモモの祝福の儀を執り行う。モモ、前へ」


「はい、神父様!」


 教会でいっつもお菓子をくれる、最近白髪が増えてきた優しい神父様が私の名前を呼ぶ。

 私は元気に返事をして、神父様が用意した水晶に手をかざす。


「落ち着いて、心を研ぎ澄ませるのです。そうすれば神があなたに道を示すでしょう」


「はい……!」


 落ち着けと言われても、余計緊張してしまう。

 私はドキドキする胸を必死に押さえて、目を閉じて水晶に意識を向ける。


 神様……どうか私に、困った人の役に立てるジョブをください……!


「おお……モモの体から光が……! 前途ある若者の輝きを見るのは、いつ見ても美しい……」


「そんな、私が美人だなんて……。神父様褒め上手ですね!」


「いや、そういう意味ではないのですよモモ……」


 神父様はちょっと困ったような声を出しながら笑った。

 美しいと言っても、美人とは別の意味ってなんだろう。大人の言うことは難しい。


「さてモモ。祝福の儀は終わりました。これであなたにもジョブが授かったはずです。水晶に意識を向けてみなさい。ジョブの情報が出てきますよ」


「はい……ステータスオープン!」


 水晶から四角い枠が浮かび上がり、そこに私のジョブに関する説明が記載されていた。

 この情報は本人にしか見えないらしく、神父様に自分がどんなジョブをもらったのか申告する必要がある。

 もちろん嘘をついているかどうかはすぐバレるらしい。神父様の【真偽眼】スキルのおかげだって。

 弱いジョブをもらってしまった子が、神父様に自分のジョブを申告することを嫌がってしまうのも、数年に一度はあるらしい。


 ジョブは今後の人生に関わる大事なものだもの。それで外れを引いてしまったら、残りの人生はかなり苦労するらしい。

 当然ジョブはあくまで本人の才能だから、それに依存しない生き方も出来るとは言われているけど……。

 子供にとって自分の才能が外れと分かるのは、かなりショックだよね。


「さあモモ、あなたのジョブは一体何なのでしょうか」


「……り子」


「はい? 今、なんと言いましたか?」


「踊り子……です神父様。私、踊りなんて一度も踊ったことないのに!」


「踊り子というと……酒場で踊っている人をたまに見かけますね。見ているだけで心奪われる、素敵な踊りでした」


「神父なのにそんないやらしい酒場に行ってるんですか? 最低です!」


「い、いやあれは村の皆さんと酒の席で交流を……ではなく。モモ、踊り子のジョブをもらったと言うことはあなたにはきっと踊りの才能があるのです。その才能を活かす道に進むか、違う道に行くか。決めるのはあなたですよ」


「わ、私は冒険者になって色んな人の役に立ちたいんです! 冒険者で踊り子の人なんて聞いたことありません!」


 魔物と戦ったりするのに踊りなんて何の役に立つんだろう。

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