第2話 小高い丘に行ったら鉄道が走っているのが見えたんだが・・
「あの・・・何を言っているのですか?」
俺は自転車から降りておばさんに話しかけた。すると、向こうからおばさんの家族らしき人が現れ、「あんまー」という声が聞こえた。おばさんは「あぃ!」と言って後ろを振り向き、俺の元から去って行った。
「何だよ。どいつもこいつも変な言葉ばかり喋りやがって」
どうやらあの人達は沖縄弁(?)を話しているみたいだけど、それすらしらない俺は自転車に乗って小高い丘を目指した。
小高い丘はどうやらまたしても綺麗な海が見えるらしい。俺は急な坂道を登りながら丘を目指した。
「ふぅーやっとたどり着いた」
俺はあの小高い丘に着くと、綺麗な海とまたしてものどかな風景を見る事が出来た。高いビルが無いからなのか遠い場所には赤瓦の屋根が無数にある場所が見えた。そこは市街地だろうか?
市街地の方を眺めていると、俺の背後から「ボー」という汽車の音が聞こえて来た。
「ん?何だ?汽車?」
俺は後ろを振り向くと、小さな鉄道が南の方角に向かって走っていた。
「あれってまさか・・軽便鉄道か・・・?」
軽便鉄道を見た俺は珍しさに写真を撮った。運輸部にいた頃、鉄道マニアの同僚から「軽便鉄道」について聞かされていたため、昔の沖縄に鉄道が走っていた事は知っていた。それに俺はその軽便鉄道についてホームページで書く作業をしたな…
軽便鉄道は沖縄戦で消失した後、アメリカ統治下になって消えたんだっけ?残念だな…沖縄戦さえ無ければ今もあったのに…俺は軽便鉄道の写真を撮影した後、小高い丘でボーと座っていた。
なんだろう。これって仕事しなくていいんだよな…いつもは仕事に追われてばかりいるのに…俺はリュックを取りだしてミニWiFiをスマホに繋げた。ミニWiFiならSNSの情報を見る事ができるので、見れるだろうと思ったが、全然見れなかった。
「くっそ…ネットも見れねぇのか役に立たなぇな…」
俺は仕方なくミニWiFiをリュックの中に入れた後、カメラ機能しか使えないスマホを触った。そこにはさっき撮影した海や汽車の写真や仕事仲間との写真、運輸部の同僚との写真が写っていた。
「懐かしいな…ってこんなの見ている場合じゃないか…」
俺はスマホをリュックの外ポケットに入れ、小高い丘から軽便鉄道が見える線路や市街地らしき建物を見つめた。
俺、すっげぇ辺鄙な場所に来たけど、どうすればいいんだろう?
夢とかじゃないよな?
もしかしてドッキリ?
帰れる方法とか無いかな?
仕事、すっぽかして上司に怒られないか?
そんな不安の方が大きくなり、俺は線路や市街地を見つめながら、立ち上がってまた自転車に乗った。
人がいる市街地へ行けば何かわかるはずだと
でも、さっきの青い痣をしたおばさんみたいに言葉が通じない人達だったら、どうしよう、まぁでもそんな時はジェスチャーでなんとかすればいいやと思った。
「よし、街の方へ向かうぞ」
俺はまた自転車を走らせ、南の方角へ向かおうとした。その時、茂みからガサガサという音がした。
すると、そこから「シャー」とヘビがニュっと出てきた。
ハブだ。確か、沖縄県のホームページ(俺はどっちかと言うと嫌いな方だが)を見ると、ハブに噛まれると、血清を打たないといけないが、血清を持っていない今、俺ができる事は1.5メートル以上の距離を置く事。
俺はゆっくり後ろにバックした後、慌てて自転車に乗り、下に下った。
小高い丘から降りて南の方へ向かうと、さっきの場所よりは人の出入りが多く、路面電車や人力車が走っていた。
人力車なんて沖縄ではあまり見かけないけど、何故かここでは走っていたし、車夫も浅草で見るのと変わらない恰好をしているけど、やっぱり裸足だ。
「でも路面電車って沖縄にあったけ?」
俺は路面電車の線路を見ながら考えたが、そういえば昔、沖縄に路面電車があった話も鉄道マニアの同僚は話していたと思う。
あーあいつからもっと詳しい話を聞けばよかったなと思ったが、そんな事はどうでもいい。
気になるのはここにいる人達、なんで裸足なんだ?今の沖縄の人って流石に裸足じゃないだろ?
何でだよ!まさか沖縄戦を題材にしたドラマの撮影か?
にしても結構、出来過ぎているような気もするんだよな。あー何でだろう。
俺は自転車を押しながら歩いていると、道行く人俺の事をなぜかジロジロ見ていた。
なんでジロジロ見るんだよ、別に今の人なら俺の事、ジロジロ見なくてもいいじゃないか?道行くを無視して俺はさっさと自転車に乗って走った。本当はどこに何があるかわからないのに…
ひたすら自転車に乗って進んで行くと、ある建物が見えた。
そこは中学生か高校生の時に行ったひめゆり平和祈念資料館の建物にそっくりな建物だった。
まさかここって、ひめゆり学徒隊の学校じゃないよな?
そう思った俺は学校に近づこうとしたが、下校する袴を着た生徒達が見えてきたので、一旦、そこから引き返す事になった。
なぜなら、俺が女子校なんか行けば不審者扱いされるからだ。
とそこに1匹の犬が「ワン」と吠えていた。
よく見ると、それは琉球犬だった。
俺は今では珍しい琉球犬を無視して自転車に乗ってその場から去ろうとしたけど、琉球犬は俺の後を追いかけてきた。
「え?なんで追いかけて来るんだ?」
俺は自転車から降りて琉球犬の頭を撫でた。
「ごめんよ。俺は別の場所に行かないといけないんだ…」
俺が自転車に乗って走らせ、市街地へと向かった。
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