KAC20247人間の色

綾野祐介

KAC20247人間の色

 エリカは街外れの火葬場に来てみた。


「本当にここに居るの?」


 今日は火葬の予定はないようだ。


 少し探してみると火葬場の隅の台の上にその棺桶は置かれていた。係の人は周囲に誰も居ない。


「隆志、居るの?」


 エリカが棺桶に声を掛けるが反応は無い。


「どうしよう」


 隆志の指示通り火葬場に来てみたら棺桶が一つ。中に隆志が閉じ込められているという本人からの知らせで半信半疑で来てみたのだが本当に棺桶はあった。


「騙そうとしているのなら承知しないわよ」


 声を掛けても相変わらず棺桶の中からは何の反応もない。悪戯だとしたら悪質すぎる。


 棺桶を揺らしてみるが重くて動かない。中に何かが入っているのは間違いないようだ。


「どうしよう。あっそうだ、電話」


 やっと気が付いてエリカが隆志の電話を鳴らしてみると棺桶の中から着信音が聞こえた。


「まさか、本当に中にいるの?」


 エリカが慌てて周辺を探索し棺桶の蓋を開けられるものを探す。少し探していると小型のバールのような物を見つけた。それでなんとか蓋に打たれた釘を抜いてみる。


 少し時間は掛かったが全ての釘を抜くことが出来た。そのまま蓋をずらして中を確認する。確かに中には何かが居るようだ。



「隆志?」


 改めてエリカが声を掛ける。反応は無い。エリカは棺桶の中を覗き込んでみた。


「隆志」


 中に居たのは確かに隆志だった。暗くてよく見えないが間違いない。台の上に置いてあるのでエリカでは背伸びしないと中が上手く覗き込めないのだ。


 なんとか手を伸ばして隆志の身体を揺らしてみる。やはり反応がない。エリカは椅子を持ってきて上から覗きこんだ。


「隆志、どうしたの?大丈夫?」


 いくら身体を揺らしても隆志の反応は無かった。


「もしかして死んでる?」


 携帯のライトで照らしてみると隆志の顔色は土気色とでもいうのだろうか、最早人間の肌の色ではなかった。


「あれ?」


 隆志の顔の後ろに何かがある。ライトで照らすとそれは同じ色をした深雪の顔だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

KAC20247人間の色 綾野祐介 @yusuke_ayano

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ