【エッセイ】色覚異常に生まれて

村田鉄則

色覚異常に生まれて

 大学を出て、SEとして頑張っていた俺は、作成中の資料にあった表の色を「緑色」と言った。しかし、横に付いて資料作成の様子を見ていた先輩が言うには、それは「灰色」だった。

 眉を顰めて、訝しげな眼でこちらを見てくる先輩は、お前の目の見え方はおかしいと言った。そして、先輩は上司に電話で俺の目のことを伝え、俺は眼科で色覚検査を受ける運びとなった。 

 眼科に行った俺は、石原式色覚異常検査表というの数多の点々から浮かび上がってくる数字を見る検査と、パネルD-15テストという、色の似ている順に色のついたパネルを並べる検査を受けた。結果、診断名は『先天赤緑色覚異常強度』だった。

 俺はこの結果を受けて非常に驚いた。自分に色覚異常があることは、それまでの日々の中で、少しは、わかっていたものの、まさか強度とは思っていなかったのだ。

 診断名を告げると、上司は俺が「障がい者であることを会社に隠していた」、「お前はおかしい」と怒った。入社前はそもそも診断もなかったし、日常生活で少し困る程度だったんで、プログラムを主に作る仕事だったので色を扱う仕事でもないし報告をしていなかったわけだ。

 上司は、信号の色が見えるかを気にしていた。もしも、出張先で信号機を見間違えて自動車事故を俺が起こしたら、お前みたいなやつを雇った会社の責任になる、という感じだ。俺は信号機の色の区別はわかるのだが、視覚を共有できるわけでもないので、上司に何度話しても納得してもらえなかった。

 上司からの指示でWordでA4用紙2,3枚に渡る色弱の症状の説明を書き提出することにもなった。そこに再度、俺は信号機の色はわかるという旨を書いていた。しかし、やはり理解されず。上司は提出した書類を受け取ってもガン無視。その日以降まともに口を聞いてくれなくなった。

 

 以上が俺の色覚異常が診断された前後の話だ。

 

 ここからは、先天赤緑色覚異常を持つと日常で困ることを述べていく。

 あくまで、俺の場合です。みんながみんなが同じ症状出るわけではないです。


 ①焼肉の焼き加減がわからん

 焼肉の焼き加減がわからない。豚肉と鶏肉はまだ分かりやすいのだが、問題は牛(バッファローではない)。牛肉はやばい。まだ赤い状態で食べようとして親に止められたことが何度かある。俺の兄も同じ先天赤緑色覚異常なのだが、兄と二人だけで焼肉に行った後はめちゃくちゃお腹を壊した。一人で牛肉を料理する際は、焦げるぐらいまで焼いたり、時間をきちんと測っている。


 ②黒板の文字が読みにくい!!!

 小中高とも、俺が行っていた学校は黒板で授業が行われていたわけだが、黒板は黒板って名前のくせに色は緑色が基本だ。いや黒くしろよ。そして、日本の授業では一般的に、赤色が強調文字で使われる。のだが…緑の上に赤文字が乗っかると…先天赤緑色覚異常の人間(俺の場合)にとってはひじょーーに見えにくい。学生時代、赤文字で文字が書かれる度に心の中でぎゃああってなったものだ。板書する際は大変で、顔を動かして文字の反射で無理やり読み取ったり、授業後に黒板に近づいて読み取ったりしていた。中にはその様子を見て、赤色チョークを使わないようにした教師も居た。それは本当ありがたかった。

 

 ③薄いピンクと水色の違いがわからん

 薄いピンクと水色の違いがわからないときがある。戦隊もののピンクが出てきたとき、日光に反射して薄くなったのか、元から薄いピンクだったのかは覚えていないが、とにかく薄いピンクで、俺は幼少期○○ピンクって名前やのに、水色やんけとツッコんでいた。ツッコまれるのは俺の方である。○○ピンクは悪くない。

 数年前、電動歯ブラシを買った時、歯ブラシの模様の色が薄いピンク色であるのに、水色だと勘違いして、買ってきて母親に男なのにピンクなのwと指摘されたことがある。

 

 ④黄緑とオレンジ、緑色と灰色の間が曖昧

 オレンジ色だと思ってたものが黄緑だったり、緑色だと思ってたものが灰色だったりは日常茶飯事です。逆もまた然り。話がかみ合わなくなってくるんで、色の話は他の人と日常では話さないようにしています。


 ⑤『アメリ』が普通に見られる

 『アメリ』って映画は黄色と赤色と緑色がめちゃくちゃ誇張されているらしい。らしいってのは、自分には、ちょっと色強調されてるなと思うけど、別に気にせず普通に見られるからだ。一方で、北野映画特有のキタノブルーはめちゃくちゃ青く感じます。


 ⑥折れ線グラフ

 折れ線グラフを色分けする機能がオフィスソフトではあるのだが、俺は色分けされた折れ線グラフの中で似た色のものが少しでもあると…区別が付きにくくなるのである。折れ線グラフの横に表示されるグラフの内容を示す、短い、色の付いた一本線と文字列を見ても、いや何を差してんねんとなることが時折ある。


 ってかそういや、電車とかバスの路線図が色分けされていることがあるが、あれも俺にとっては視認性が悪いのです…仕方ねえけども…


 ⑦新鮮な野菜、魚がわかりにくい

 新鮮なものがガチでわかりにくい。新鮮って何!!?野菜はスーパーでも道の駅でも、同じ種類のものだと、どれも同じに見えるし。魚はテカリで新鮮さがわかると思ってます。いやガチで。


 ⑧ランプの色の変化がわからない

 ランプの色の変化で状態を示す電子機器ってあるじゃないですか???あれがちでやめてくれとなる。緑色が赤色になったら、○○ですって説明書に書いてたら、ぎゃああとなる。せめて、点滅してくれよ!!!!

 

 今回、思い浮かんだのは、以上です。まあまあ困りごとはあるわけですが、まあ、生きていくうえではそこまで必要…ない(?)ことが多いので、なんとか生きていますぜ。まあ、青が余計な物抜きで良い感じに見えていると考えたら、まあええんかな。それぐらいしか俺には利点が…浮かばぬ!!以上!!

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