リトルリーグでスピードスターと呼ばれた男

勝田一

第1話 優勝を目指して

 全国中学総体 100m走 男子の部決勝戦が行われようとしていた。決勝戦へと勝ち進んできた速水走一郎はここまでの予選では余裕を持って走ってきた。


「決勝では全力を尽くすぞ」と意気込んでみたは良いものの小学校5年生の時から自己ベストを更新できていない。

 小学校5年生では、中学1年生の日本記録タイムを更新して将来を渇望されていた。しかし小学5年生以降では1年間に1cmしか身長が伸びておらず、中学3年生になった現在でも身長は156cmしかない。

 昨年は3年連続全国優勝の座から降ろされて悔しい思いをした。今年はリベンジに燃えている。


 そんなことを思いながらスタートラインへと向かった。

 

「On your mark」 「Set」 「Bang!」


 ピストル音とともに完璧なスタートダッシュを決めた走一郎であったが、序盤でつけた差は中盤ではほとんどなくなり、ゴールする時には4番手であった。


 自分の中ではベストを出せていたが、負けてめっちゃ悔しい。色々なトレーニングをしてみてもタイムを伸ばせない現実がとても辛い。そう思いながら、すぐに観客席にいる両親の元へ向かった。


「30mくらいまではトップに立てるんだけど、後半伸びてくる人に今回も勝てなかったよ」


「残念だったな。だがここで終わりじゃないからな。まだまだ次へ向かって練習を頑張ろうな」


「高校になったらリベンジしようね」


 両親は慰めつつも次に向けて話をしてくれた。両親はどちらも短距離競技の元オリンピック日本代表選手で父親はいまだに100m走の日本記録を保持している。


「これまで指導してくれてありがとう。また次も頑張るよ」

 

 勝てなかったことはとても悔しかったし、今まで色々なトレーニングをしてもタイムが伸びなくて、このまま自分のタイムが越えられないのではないかと、とても不安であった。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る