第20話 浮き足

「ねえ もう十分離れたんじゃない? ハァハァ……」


 雪菜が少女を抱えて息を切らす。


「ってか なんでいきなり逃げた訳?」


「僕が銃を撃ったから アイツらは自分の縄張りを守るのに必死なんだ」


「だから?」


「アイツらが俺らを殺しに来るってこと」


 インガが簡潔に言ってやった。


「アイツって落葉地区の?」


「そう……」


「っていうか 休憩しない?」


「彼女を警察に引き渡してからだ」


「まま待って! 普通に嫌なんだけど」


「私も…… 武器が……」


 雪乃が口を開いた。


「最後まで付いてこなくていい」


「あんたがこの子運ぶってこと?」


「そうだが」


「ええ〜……」


「じゃあお前が行け」


「それは怖いからヤダ」


「あのなぁ……」


「!! わっ」


 インガと雪菜の口論に少女は目を覚ました。


「あ! 起きた!!」


「ど どど どういう……」


 少女が辺りを見渡し、インガを見つけ顔を伏せた。


「あ…… 1人で立てます……」


「本当?」


 雪菜が少女を降ろした。


「保護者は呼べるか?」


 インガが少女に問う。


「……家に帰るつもりはないです……」


 少女は足元を見つめた。


「……とりあえず君を警察に届ける」


「その後はどうなりますか……」


 少女の視線は落としたまま。


「……君の身元が分かれば 保護者の所へ君を引き渡すことになる……」


 インガは息を詰まらせてから、正直に彼女に告げた。


「それは君が望もうと望まずともだ……」


 暗澹あんたんとした空気が沈み、息が詰まる中、雪菜が声を上げた。


「それは今すぐ決めなくちゃダメなの?」


 雪菜が少女の肩に手をかけ言った。


 そして、タイガが何かに気付いてインガに耳打ちした。


「彼女…… 殺意がある……」


 インガはそこまでタイガの言う“殺意”を信用してはいなかったが、彼女への休息は必至だと考えた。


「あそこ……」


 雪乃がそう言って指差したのは銭湯だった。



✴︎後書き

最後まで読んでくれて嬉しいです!

是非次回も呼んでください!!

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