第10話 獣の頭

 ファイアの足元で弾丸が弾けた。


「って あっぶね テン姉〜 危ないよ〜」


「ファイア 行き過ぎ」


「んなんでよぉ」


 ファイアが年相応の駄々をこねる。


「行くよ」


「って テン姉待って!」





「右の物陰に2人 あとそこのコンテナの後ろに3人」


「っしゃ 俺が行く」


「レン イクゾ」


「タイガっ 待て1人で行くな!」




 あらかた敵を一掃したインガ一行は、その息が聞こえてくる大型倉庫の方へ向かった。


 扉の向こうで待ち受けていた獣は、この世で生を受けた訳ではない。


 人間の確かな意図を孕んだ命の形は、何処かの経典で冥府の門の番犬とされるを模して。


「また 会ったねぇ」


 高みからそう叫ぶのは、ついこの間インガに犬を放すように交渉して来た男だった。


「インガ! 君だよ!! 僕の大事なベイビーだったんだ!!」


 目をかっぴらいて、大袈裟な身振り手振りで訴えかけている。


「本当はあの時君をぶち殺してやりたかったよ わかるかい?! インガ!!」


「……ん」


「なあ わかっていないのかい?! 君がデカブツとか酷い事言ってくれてさぁ!! 君は何をしでかしたのか分かっていないようだ 親が子を失う気持ち……」


 レボルバーを一発。インガはその男に撃ち放った。


 鈍い音が響いて、弾丸は男の目の前で止まった。


「おい! まだ 僕が話してるじゃないか!」


 すかさず、レンがガンブレードのトリガーを引いた。


「だからっ!!」


「防弾ガラスだ」


「ちょっとくらい話をさせてよ! もう一つ言いたい事があるんだ インガ 君 元国家警察なんだって? ああああああ!!!」


 唐突に発狂し出した。


「君ならわかるだろ? 僕ら『アートライブズ』は国家警察が憎いんだ デザインペット反対運動を扇動し あまつさえビルまで…… 撤退宣言の後だったんだぞ!!」


 そうアートライブズ本社ビルが爆破されたのは、デザインペット事業から撤退を表明した一週間後だった。


「……」


 インガは急に下を向いた。


「どうした 反省してるつもりか?」


「は はは……」


「インガ……?」


 ニヒルな笑みを浮かべておもてをゆっくりあげる。


「憂さ晴らしなんだろ 結局…… 話は後だ 始めろよ」



✴︎後書き

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