色は、匂えど、堕ちるは、早い
蘇 陶華
第1話 探しています。あなたのオーラ(色)を見せて下さい。
僕は、今日も街角に立つ。日曜日なので、人の往来は多く、dれもが、僕に目を向ける。
「お姉さん。一緒にお茶しましょう」
声をかけてくれる若い人もいるが、結構、年配の人もいる。
「パパ活しているの?」
「少し、休んで行かない?そういうつもりだろう?」
多くは、男性。大体が交際やそんな事を望んでいるが、中には、一緒に写真を撮って欲しいと言う子もいる。だけど、そんな時には、僕は、写真を断る様にしている。
「何これ?」
誰もが、僕と一緒に写真を撮ると、画像を見て声を上げる。
「どうして、ちゃんと映らないのかな」
僕の顔だけが、反射し、綺麗に映らない。
「逆光が入ったんだね」
僕は、そう言う事にしている。だって、僕が、写真に映る訳はないから。今日も、僕は、大勢の人の中から、探している人がいる。僕の大事な片割れ。多くの人が、僕に声を掛けてくる。オーラは、スピリチュアルなエネルギー。その人の魂の状態を表す。色は、全部で14色あり、形も様々。街の中は、様々な色で、満ち溢れている。形も様々。僕は、それらを見分ける事もできる。もちろん。形も。ただ、この街の人達の色は、暗く、刺々しい。なんて、憎悪に満ちた色なんだろう。僕に声をかけてくる人達は、寂しく、僕に癒しを求めてくる人が多い。刺々しいオーラを持つ中で、丸みを帯びていて、下心の中には、人に癒しを求める深い孤独が垣間見える。
「どうだ。今日も見当たらないか?」
突然、声をかけてきたのは、親友の緋色だ。去年、この街角で出会った。
「本当に、1ヶ月前に見かけたんだな」
緋色は、上から下まで、僕の事を舐め回すように見る。
「よせよ。そんなに、見るなよ」
「いやー。よく、こうも、女装が似合うかと思うと。知らなかったとは言え、俺も惑わされた」
「ふん」
僕は、鼻を鳴らした。緋色は、軽いチャラ男で、学生の癖に学校にも行かず、この辺をたむろっている。裏でも、悪い奴らとつるんだりしているが、彼のオーラは、何故か、美しく丸い。
「早く、見つかるといいな」
緋色は、顔さえも、僕自身が忘れてしまった片割れの再会を望んでいた。
「十八になる前に見つからなかったら、どうする?」
緋色は、一人ごとの様に呟いた。僕の呪いを特には、僕の片割れに遭うしかない。叶わなければ、僕は、この負のエネルギーに呑まれ、消失するだけだ。
「小さな頃に別れたんでは、顔さえも覚えていないよな」
どうして、僕が、女装をしているかって?それh、僕の片割れ、つまり、双子の妹が女性であり、施設を出た後、行方をくらまし、この街で、見かけたと言う情報があったからだ。本人に会えなくても、何か、周りの者が、声をかけてくる筈だ。実際、1ヶ月前に、僕を妹と間違えて声を掛けてきた少女が居た。
「紫苑。今日は、そろそろ帰ろうぜ。休日が終わる夜は、人気も無くなるし」
「サッカーの試合もあるしな」
僕は、緋色に微笑みかけた。その時、
「あ?」
僕は、声を上げた。暗く刺々しい人混みの中を進む透明な光の存在に気がついたのだ。
「いたのか?」
光は、真っ直ぐ、僕に向かってくる。緋色は辺りを見渡し、人混みを掻き分け進む。僕と同じ顔を探して。
「紫苑!」
遠くで、叫ぶ。
「居た!」
暗闇の中で、差し込む一筋の光。そこに現れたのは、一人のショートカットの少年だった。
「あなたは?」
僕と目のあった瞬間。その少年は、僕との血のつながりを感じた様だった。
「覚えている」
目の前にいる少年の様に、髪の短い子は、僕の妹。女装をして、立つ僕の妹だった。
「今日まで、探していた」
僕は、目の前の妹に手を差し出した。
「やっとだな」
緋色は、表情を和らげた。
「やっと・・・」
僕は、妹の手を握った。
「やっと、手術ができる」
僕ら双子は、親の都合で、施設に預けられていたが、妹は、引き取られ、離れ離れになっていた。事もあろうことか、僕は、難病に侵され、同じ型を持つ、妹でなければ命が助かる保証はなかった。この能力だけが、妹を探す術だった。
「手術する為に、私を探していたの?」
「勿論。逢いたい気持ちもあったけど」
「私が同意すると思ってる?」
「してくれないの?」
「どうかな?」
僕は、僕の片割れを探し出す事に成功した。勿論、手術は成功したけれど、僕は、その後、この能力のせいで、とんでもない事に、巻き込まれる事になる。それは、後日、ゆっくり、話そうか。
色は、匂えど、堕ちるは、早い 蘇 陶華 @sotouka
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