第8話
「おい!早くしろボケがッ!」
50代程に見える小汚いおっさんが唾を飛ばしながら喚く。
怒気を孕みながら、対応のギルド嬢を睨みつけた。
「すいません、ただいまボス討伐依頼は大変混み入ってしまっていて対応が数日ほど遅れてしまいます。大変申し訳ありません」
それとは対照的に涼しい顔を浮かべながら淡々と述べるは私、
正直、この仕事を半年も続けてくればこの様な暴言ジジイの対応などお手の物になってくる。
「申し訳ないじゃねえだろ!お客様が待ってるつってんだろッ!」
私の対応が気に入らなかったのか、ジジイはこめかみに青筋を浮かべた。
おうおう、どうやらヤバそうだぞ?
「申し訳ありません」
「クソの役にもたたん無能が!お前らみたいなギルド嬢なぞこの社会に居てもなんの意味もないからな!」
はいはいそうですかー。
ギルド嬢は確かに代えのきく仕事かもしれない。
でも、それでも今目の前にいるクソジジイよりはまともな存在ではある。
あー、ヤバい。ムカついてきた。
「申し訳ありません」
「チッ!とっととくたばれ!」
そう言ってジジイは子供には決して聞かせれないような暴言を吐き、踵を返して去っていった。
全く、面倒臭い客め。
ギルド嬢は安定していて、生涯食っていける仕事ではあるが、こういうクソ客の相手をせねばならんのが欠点だ。
「災難ねー、理音ちゃんはああ言う客に良く絡まれるよねー」
後ろからニマニマとした笑みを浮かべた同僚が話しかけて来た。
ちなみに、名前は
黒髪黒目の地味な私とは違い、金髪のギャルギャルした印象の人だ。
「まあ、私って身長小さいじゃない?そういうので舐められてるんじゃないかな?知らないけど」
「確かに理音ちゃんは背低いもんねー。ていうかさー、今日D-18のボス討伐したい冒険者多くねー?なんかあったのかな?」
ん?
確かに今日は何故かやたらとD-18の討伐冒険者多いな。
普段だったら20人か30人くらいだってのに今日は既に300人を超えている。
流石におかしい。
何かあったのだろうか?
「あー、それね。なんか昨日ダンジョンRTAでD-18の記録を塗り替えたって人が出たらしくて」
そう言って答えるはもう一人の同僚である
茶髪で、どこかおっとりしていて雰囲気、天然な人だ。
「それでRTA中にダンジョンの床ぶち抜いて3回丸ごとすっとばしたらしいのよ。で、今もその穴が空いてて冒険者たちは簡単にボスに挑めるようになったの。今はネットでその話題で持ちきりになってるよ?2人とも知らなかった?」
あれ?
もしかしてそれって私?
「なるほどー、それでか。だから冒険者がやたらと多かったのねー」
なるほど。
私のせいですね、それ。
完全にやらかしてしまったかもしれない。
今日はやたらとD-18の冒険者が多くて忙しいなって思ってたら、自分のせいでした・・・・・・。
うん、やっちまった。
「今日は残業コースかな・・・・・・」
はあ、と思わず溜息が漏れる。
書類がエグいくらい溜まってるもん。
目の前に積まれる書類の山は既に400枚は突破している。
これ、ヤバいな。
「そうだねー、エナドリ買ってくるか・・・・・・」
どよん、と暗い空気が私たちの間に流れる。
「ていうかさ、さっき言ったRTAの人凄いカッコよかったけど、どんな人なのかな?」
有栖が言った。
「と言うと?」
「配信見たけど、体格的になんとなく女の子っぽいのよ。ちょうど理音くらい?」
「ハハハー、ワタシジャナイヨー」
「うん、知ってる」
酷い・・・・・・。
「あれ、フォロワーが1週間で10万人超えたら顔出しするって言ってたけどもう既に超えてんだよね。どんな顔してんのかな?」
うん?
どう言うことだ?
脳内が白くなり、表情が凍る。
何か、嫌な予感がする。
すかさずスマホを開き、自身のアカウントをチェックすると、えげつない数の通知が来ている事に気づいた。
は?
ドユコト?
フォロワー数を確認すると、なんと103573人。
思わず奇声を上げてしまう。
は?うん?
どう言うことだ!?
なぜ・・・・・・何故?
なんで1週間って言ったのに1日で達成してんの?
てか、そもそも本当に達成できるもんなの?
いや、実際にそうなってるか。
それでも・・・・・・本当になんで?意味が分からない。
そして、その疑問を解決するかのように、昨日の配信にこの様なコメントが付いていた。
『この人今、配信者杯2位なんだけどwwwwwww』
そのコメントを目にし、私は膝から崩れ落ちた。
「2位って、はああああああああああああ!?」
─────────────────────────
色々誤字があったので修正しました。
─────────────────────────
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます