1 クラスみんなで異世界召喚?……喧嘩しないといいなぁ

「ハッ――っと、落下死してなかった……よかったぁ」


 寝転んだ体勢で思わず安堵の息を吐く――いや寸前まで落下してる感覚だったもので。

 気が付くと、そこは異世界でした……って、一見じゃ分かりませんね、ええ。

 でもなんとなくそれっぽいかな?

 

 私・八重垣やえがき紫苑しおん他、私みたいに召喚されたと思しき人がいる場所は、体育館より一回り大きい位の真っ白い建物の中だった。

 多分神殿とか教会とかそういう神聖な場所なんだろう。

 そういう場所特有の厳かな雰囲気漂ってるし、奥の方には女神様的な大きな像もあった。

 女神様の造形、凝ってるなぁ……私達の世界の美少女フィギュアみたい。


 まぁあくまで推測なので、実際にはここが悪の組織の拠点でしたー!……みたいな真逆の真実の可能性も――流石にそれは疑い過ぎかな。


 ゆっくり身を起こし、立ち上がりながら周囲を見回す。

 動揺はしてるけど正直ちょっとしたワクワク感の方が強い。

 さっきの誰かの話ぶりだと命の危機にあるようなヒトはいないだろうし、今はワクワクさせてもらいます。


 さておき。

 さっきから周囲確認の際に視界に入っているんだけど――みんな、見知った人達だ。


「うん、間違いなさそう」


 小さく呟く……どうやら、全員顔見知り――クラスメートのようだ。

 クラスまるごと召喚かぁ……結構あるよね、そういう創作物。


 でもみんな顔見知りで良かったー!

 わたくし、結構陰キャ気質なので、正直知らない人だと話すのが難儀なのです。


 というか、一応生物学上の分類はわたくしめも女なので、知らない人だと貞操の危機とか――いや、ないかぁ、私だもんね。

 ふふふ……おっぱいはちょっと大きめだと思うんですけど、私は色気とかそれ以前の問題だからね!

 なんせ恋愛経験ゼロなので!


 ……うう、考えれば考えるほど悲しくなってきた――。

 

 って、クラスのみんな揃ってるって事は教室にいた人だけで召喚されたのかな? 

 あるいは誰かを一人を召喚して巻き込まれたとか?

 まぁなんにせよ、誰がどうしたとかの責任の所在は今は考えないでおこう。

 下手にそういう事言い出すと、クラスの全体の空気が悪くなる――


「おいおいおい! 一体全体誰のせいだよこれはよぉ!」


 だというのに、そんな事を言い出す人がっ!

 いや、うん、君はそう言いそうな気がしてました――予想どおりでも嬉しくないなぁ。やめてほしいなぁ。


 少し離れた場所で声を上げたのは、寺虎てらこ狩晴かりはるくん。

 大柄な身体や大きな声は多少威圧的で、国民的アニメのガキ大将めいている、そういう人だ。

 いつもちょっとした事でよく騒いで周囲を巻き込むからね、寺虎くんは。

 でも、この状況でよく騒げるなぁ……その度胸(だけ)は陰キャ的な私的にはちょっと羨ましいです、はい。


「これは原因が分かったら、クラス皆でどういう了見か聴かないとなぁ? そうだろ?」

「――騒がしい。集中できないから静かにしてくれ」


 そんな中、見かねた学級委員長より先に声を上げたのは堅砂かたすなはじめくん。

 彼はこの建物を調べていたようで、先程から壁を軽く叩いたり超至近距離で観察したりしていた。


 多分、このクラスで一番頭が良いヒトだと思う……だって如何にもなクール系眼鏡キャラだし!

 いや、見た目で人を判断するつもりはないけど、普段の授業の様子から多分間違ってないです。


 世間一般でいう所のイケメンなので女子からは人気があるみたい。

 私は女子の中では微妙に浮いているというか距離があるので、多分としか言えないけど。

 私みたいにイケメンヒーローとかのイケメン部分よりヒーロー部分、能力とか必殺技が気になる女子って多分少ないし。


「そも原因なんて後から分かるだろう。

 あの謎の声がこっちで全部説明するって言ってたんだから」

「おぅおぅ頭良い奴は冷静でいいねぇ。かっこつけて調べたりなんかしやがって。そういう所が鼻に――」

「そんな事より、あの声の主からもらった能力なりなんなり確かめたらどうだ?

 俺みたいな鼻につくかっこつけに話しかけるよりは建設的だと思うが」

「お! そうだったそうだった!」


 おお、流石堅砂くん、自分への意識を見事に逸らしてのけた。

 いざとなれば自分が寺虎くんに声を掛けた方がいいかなぁと思っていたので助かりました。


 いや、私人と関わるの苦手なんですけどね…それでも人が喧嘩するよりはイヤじゃないので。

 

 そしてお陰様で私も貰った力について調べるのを思い出せました。

 どんな感じになるのか、自分のステータスはどんな数値なのか、貰った時は楽しみにしていたのに……重ねて感謝です。


「――ええっと、意識すればいいのかな」


 一人呟きながら、脳内でテストしてみる。

 イメージはゲームそのままに、コントローラーでメニューを開くような――


「むむむ――おおー!!」


 そうしてうんうん唸っていると、パアッとステータス画面が

 これはテンション上がるなぁ、うん。

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