いきなり「ダンジョンマスター」やることになりました。
風葵
#01-1 僕が「ダンジョンマスター」始めた理由
#01-1-01 キミは椎葉希望、だよね?
それは確か11月上旬。
日付が変わるくらいの夜遅い時間のことだったと思う。
「こんばんは」
いきなり背後から声をかけられ、振り向いた僕は思わず息を飲んだ。
そこにいたのは物凄い、としか言いようのない美少女だった。
見た目の年齢は高校3年生の僕と同年代くらい。
キラキラと輝くような銀髪を肩の辺りで切りそろえている。
瞳の色は青空を思わせるライトブルー。
背の高さは170ぎりぎりない僕よりもう少し低いくらいだろうか。
黒のワンピース、ゴスロリ服と呼ぶような感じの凝った意匠の服に、同じく黒の手袋とニーソックスという出で立ち。
ああいうのってリアルだと痛々しいものだと思っていたけど本物の美少女が着るとヤバいくらいに様になるんだな、と認識を改められた。
後、目立つのはリボンで飾られたつば広の帽子を斜めにかぶっていて、手には握りの部分が羽ばたく鳥のデザインのステッキを持っているところか。
いや、正直言うと。
どこのアニメかゲームから出てきたんだ、て言いたくなったよ。
そんなことあるはずないんだけど、そうとしか思えないくらいの。
本当に現実に存在するのか疑わしいような美少女だった。
「キミが
自分の名前を呼ばれて、僕は頷いた。
あらためて自己紹介すると、僕の名前は
年齢は17歳、公立高校に通う3年生。
成績は良い方だけど天才とか秀才とか呼ばれるほどでもなく、運動神経はあんまりよくない。
趣味はゲームとアニメと動画鑑賞。ただオタクと言うほどのめり込んでいるわけでもない……はず。
まあ、どこにでもいるような一般男子高校生だ。
「キミに話があって来た」
こんな都市伝説の具現化のような美少女から名指しでお話されるような覚えはまったくないんだけど。
人違いじゃないかな?
「キミのお父さん、シバ……じゃなくて。
思わず耳を疑った。
あのクソ親父が?
仕事で忙しいからとほとんど家に帰ってこないダメ親父だ。
ごくたまにメールで連絡を入れてくるくらい。
一応、生活費や学費やその他諸々必要なお金は僕の口座に振り込んでくれていたから金銭面で生活に困ることはなかったんだけど。
それだけだ。
ちなみに僕には母親はいない。
僕を生んですぐに亡くなったのだと聞いている。
ついでに言うと兄弟姉妹もいない。
一人っ子だ。
そんな状況なのにこの父親は僕のことをほぼ放置していたのだ。
だいたい僕が小学校低学年のころからだから、もう10年近くになる。
近所の親切なお姉さんが家族ぐるみで面倒見てくれてなかったら僕はとっくに野垂れ死んでいたぞ。
そういうわけで僕が自分の父親をクソ親父と呼ぶのも納得してもらえるだろう。
「君のお父さんはこの世界でも有数の、いや、世界一の『
は?
「
何だそれ?
「
今から15年前。
突如、世界中で「
それが「
さらにダンジョン内限定ではあるけれど超能力とも言うような不思議な力に目覚めた人も現れた。
そのため、一攫千金一発逆転を狙って「
今では
視聴者の多い配信探索者は配信中の投げ銭だけで結構な収入だそうだし、テレビに出る芸能人なんかよりも知名度もあったりする。
もっとも僕はライブ配信のノリはあんまり好きじゃないので見るのはまとめ動画とか攻略動画とかくらいだけど。
ちなみに今まで語った僕の
でも「
「そして、君のお父さんはとある『
「待った」
どんどん話を続けようとする彼女の言葉を。
僕は慌てて遮った。
「ちょっと待ってくれ。まず、君に言いたいことがある」
これはあんまり大きな声では言えないことだけど。
僕は女の子と付き合った経験もないし、学校でもそんなに女子と話をする機会なんてない。どちらかというと陰キャよりのキャラなのだ。
それがいきなり超美少女に話しかけられて緊張して舞い上がっていた。
そこに父親が死んだというショッキングな話を聞かされたわけだ。
だから正常な判断力を失っていた。
混乱してしまっていた。
まず、今の状況がおかしいことに気づかないといけなかったのだ。
「……ここ、僕の家の中だから。靴は脱いで欲しいんだけど」
そう。
ここは僕の家の自分の部屋で。
机に向かって受験勉強をしている真っ最中で。
そんな状況で僕は声をかけられたのだ。
「そもそも、どこからどうやって家の中に入って来たんだよ!? ちゃんと戸締りしてたから家のドアは鍵がかかってたはずだよな!? あれか。不法侵入か? 不法侵入なのか? 警察か? 警察呼ばないと駄目か? 110番するぞ!?」
つい大声早口でツッコミを入れてしまった。
今のおかしい状況に気づいたら何かツッコまざるを得なかった。
「あ、えっとね……待って。ちょっと待って」
今まで超然として神秘的な美少女だったのだが。
急におろおろしだした。
「ほら。実はちょっと宙に浮いてるんだよね、ボク。足は床についてないから。だから靴は履いてても大丈夫だよね?」
「そういうことじゃねえんだよーーーーーーーーっ!!!!?」
僕は思わず絶叫した。
ちなみにこの美少女。
本当に床から1センチくらい宙に浮いていた。
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