百合パレット

源なゆた

赤黄

「赤が、青だったらな~」

「なんでそんなこと言うのよ」

「青だったら、緑になれたのに」

「赤のあたしじゃ、ダメなの?」

「えっ……ダメ、じゃ、ないけど」

「なら、いいじゃない。一緒にオレンジになりましょう」

「あっ、ちょっと、いきなり、ダメッ」

「ダメなこと、ないでしょう?」

「そうだけど、そうじゃ、なくて、あっ」

「ふーん、こんなふうになっちゃうんだぁ」

「だって、それは、赤が……」

「あたしが、なぁに?」

「赤が……ざろうと、する、から」

「混ざろうとしたら、こんな風になっちゃうの?」

「っ……!」

「そっぽ向いちゃって、可愛いんだぁ」

「もう、知らないっ!」

「あ、おこった? 怒っちゃったの?」

「ふんだ」

「怒ってるところも、可愛いね、きーちゃん」

「きーちゃん言うな!」

「だって、原色あたしたちなかじゃない」

「他の原色こたちとも、つるんでるくせに」

「それは、お仕事だから。こう見えて、いそがしいのよ、あたし」

「知ってる! けど、でも」

さみしくて、ねてる、ってこと?」

「………………そう」

「あら、あらあらあら、もう、きーちゃん、可愛いっ!」

「あっ、そこ……って、誤魔化ごまかしたってダメなんだからっ!」

「ダメって、何が?」

「だから、その、混ざろうと、するの……とか」

「混ざっちゃ、ダメなの?」

「ダメじゃ、ないけど、ダメ、っていうか」

「本当は良いってこと?」

「そうじゃなくて!」

「あたし赤だから、はっきり言ってもらわないと、わからないなぁ~」

「赤、こういう時だけソレ言うよね」

「あ、バレたぁ?」

「何年付き合ってると思ってるのよ」

「ふふっ、何年かしらね。もう、忘れちゃった」

「忘れ、ちゃったんだ……」

「あーもう、嘘よ、嘘! 最初から一緒だったんだから、忘れるわけないでしょう」

「……わ、わかってた、し」

「……本当、ズルイわよねぇ、きーちゃん」

「何がよ」

「可愛すぎる、ってこと」

「またそうやって」

「誤魔化してないわよ?」

「っ!」

「だって、本当のことだもの。きーちゃんは、可愛い」

「……赤、だって」

「うん?」

「赤だって、可愛い」

「ふふっ、ありがとう、きーちゃん。大好きよ」

「余裕そうなの、ムカつく。……でも、好き」

「好き、だけなの?」

「……大好きっ! これでいい?」

「ええ、とってもうれしい。お互い大好きで居られて。……だから、一緒に、ね?」

「それは、でも、ここじゃ……」

「ここだから、いいんじゃない」

「あっ……もう、赤ぁ……」

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百合パレット 源なゆた @minamotonayuta

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