黒幕ゲーム_とある完全犯罪組織の秘密会議録

久追遥希

とある完全犯罪組織の秘密会議録

2月28日(水)_すべての始まり《1巻1章開始前》

「――俺さ、完全犯罪組織を作ろうと思ってるんだ」


「はぁ?」


 気合いを入れて放った一言に対し、胡乱うろんなジト目を返してくる少女。

 水色のショートヘアが呆れたようにさらりと揺れる。


「出会った時からおかしな方だとは思っていましたが……」

「ついに壊れてしまったんですね、ご愁傷様です」

「それでは」


「待て待て待てって!」


 ここで見捨てられたら相当イタいやつになってしまう。

 だから俺は、頭の中でゆっくり言葉をまとめて。


「えっと……例の〝未来〟の話だよ」

「普通のやり方じゃ、三年後の事件はもう絶対に避けられない」

「この方法が一番いいっていうか、他に解決策が思い付かないんだよ」


「……確かに、そうかもしれませんけど」


 不承不承ふしょうぶしょうといった様子で頷く少女。


「本当の本当に、本気なんですか?」

「高校生にして立派な犯罪者になっちゃいますけど」


「覚悟はできてるよ」

「でも、■■さんを助けるためならどうでもいい」


「……はぁ」

「それに付き合わされるわたしの身にもなってほしいところですけど」

「仕方ありませんね、全く」


「え。……いいのかよ?」

「正直、もうちょっと反対されるかと思ってた」


「黒幕さんは強情なので、抵抗しても仕方ありません」

「――やりましょう」

「もう覚悟はできました」


 深い紺色の瞳で俺を覗き込み、少女がこくりと首を縦に振る。


「ですが、勘違いしないでくださいね?」


 ほんの少し不満げに尖らされた唇。

 そうして、釘を刺すようにピンと人差し指が立てられて。


「……黒幕さんのためではなく、あくまで■■さまを助けるためなので」

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