(1)
見た所、数えるのが面倒な程の数を引き連れている。しまったな…これを二人で倒すってのは無理があるか?狩に、メェルが完全防御を展開できれば話は変わるし、そもそもだ、相手がどんな能力を持っているかもわからない。死地に飛び込むようなものだな…。
「さて、どうしようか?」
「飛び込み…ますか…?」
「え~…本当に言ってる?」
「それ以外…ありますか…?」
うん、無い。別に俺らが喧嘩売られている訳でもないし。でも、何か啖呵を切るぐらいはした方がいいかもしれないな。何かいいセリフ無いかな…。”がお~!食べちゃうぞ!”とか?”自分の領地に帰って草でも食ってろ!”とか?まぁ…なんでもいいけど。
「よし、セリフは決めたよ」
「何に…するんです…?」
「がお~!自分の領地に帰って草でも食ってろ!」
「……。分かりました…。」
メェルはそのまま、道の隅に生えている草を食べに行った。なんで?!メェルに言ったわけではないのに!くそう…あのバカ指揮官め!お前のせいでメェルが…道端に生えている草を食べに行ってしまったではないか!うん?これもまた、あのバカ指揮官と同じ人の所為って訳か。
「がお~!自分の領地に帰って草でも食ってろ!」
「なんだ?!お前?!」
「お前の所為で友達が道草食っちゃったじゃないか!」
「道草?文字通り食べるものではないだろ?」
「なんでこういう時だけ頭が回るんだ…バカ指揮官の癖に」
「なん…だと?!」
指揮官は頭から、やかんかって言うぐらいの煙を出す。小さい脳みそが煮えくり返っているみたいだ。でも、こいつも本当は馬鹿じゃないのかもしれない。だって、普通に正論で返して来たし。
「いいのだな?お前の相違でこの領地が挙兵した事になっても?」
「がお~!俺ら二人だけで充分だから、領地は関係ないぞ~!」
いつまで俺はがお~ってしなきゃいけないんだ?でも、いい感じに頭に血が上っているな!この人を馬鹿にするスタイルは最高だ。だって、相手が勝手に怒って冷静さを欠いてくれるのだから。そして、俺は大事な事を言った。この領地の相違ではない、と。完璧だ。後は全部倒すだけなんだけど…出来るか?
「メェル、行くがお~!」
「……。いつまで…続けるんですか…?」
「この戦争が終わる時まで、がお~!」
「気に入った…です…?」
「そんなことは無い。頭が悪そうに見える気がするから。」
「そう…ですか…?」
とりあえず…ここから少しだけ離れた所に森が一部はげている場所を見つけた。そこに行こう、城門の前で戦うのは…やばいだろ。すたすた、と城門の場所から小走りで去る。指揮官は全軍を進めてくる、二人相手に。本当に指揮官なのだろうか、あまりに無計画すぎるだろ…それは俺も同じか。
「ふぅ…ここなら行けるか」
「はい…頑張ります…。」
とりあえず作戦はストロングスタイル、全てを弾いて、来た者を斬る。それだけ。スキル持ちだけを警戒しておけば何とかなるだろう…か?見るからに数百は居るんだけど。ごめん…死ぬかも。
「ごめん…死ぬかも。」
「大丈夫…です…私が居ます…!」
「やる気だね?良い事あった?」
「道草…食べました」
あ、あれ良い事なんだ?まぁ…メェルがそういうならいいよ。とりあえず…お、来た来た!進軍の合図をしているな!さぁ…戦闘に入ろうか!
試合開始の合図が聞こえます!ここから先は視界は良好、二人で攻めます!数百の軍団が一気に攻めてくる、二人に対してですよ!なんと大人気ないのでしょうか!しかし、戦争とはそういったものでございます、いつ命を落とすか分からない”死合”ですね!こちらもメェル選手が盾を構えて迎撃態勢!いつでもかかってこい、と言ったところでございまして、初期地から一歩も動きません!
「さて、どう来るかな?」
まずはメェル選手の前に並んだ四人の騎士!どの方も重装備でメェル選手よりも体格がでかい!そんな敵は一気にメェル選手に切りかかる!メェル選手は弾き返した!大男四人の力をいとも簡単に跳ねのける!すかさず、オーキチ選手がとどめの斬りつけ!いつもと違う感覚なのでしょうね、人を斬る…というより叩きつけていますね!切れなくても十分です!
「金魚みたいにパクパクしてるわ、あの指揮官」
「魚…可愛いです…!」
「あいつは可愛くないからね?」
戦場なのに、こんなにも余裕がある二人組は未だかつて存在しなかったことでしょう!二人はバッタバッタと草木をなぎ倒すがごとく!快進撃が続いていきます!おっと…?何かが出てきた様子だ!奥の手かもしれない、目を凝らして見て見ましょう…なんという事だ!獣人の集団が出てきた!
「え…?こっちに牙剥くの?まさか…隷属か?」
これは胸糞案件ですね!きっと、獣人を同士討ちさせようとしたのでしょう!なんという戦法だ、ありえない!人の所業とは思えない!
「お母さん…?」
「…え?」
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