酒のイロハ
椿 恋次郎
酒のイロハ
先に答えを言っておくけどさ、正解はあるけど無いんだよ。
え?そうだよ、「無いアルヨ」だよ。
飲みニケーションなんて言葉は悪しき風習と社会から抹殺されてる昨今、まさか後輩から「酒の飲み方教えてくれ」とは藪から棒と言うものだ。
確かに履歴書に「趣味:酒」と書けるくらい飲むのは好きだし先輩方から「酒に関する事ならアイツに聞いときゃいい」みたいにもよく言われてる。
ま、形から入るのが一番簡単だしパット見カッコよさげに見えるバー飲みでも教えてやれば後は好きにするでしょ。
結局自分の好きな酒を頼むのが一番…好きな酒を探すのも楽しみなんだけど、それはさて置き一杯目は軽めの物がお勧めだ。
出来るなら毎回同じ物を飲むと良い、「舌を整える」あるいは「確かめる」意味合いがある。
そういう意味では「トリあえずナマ」ってのも理には適った飲み方ではあるんだけどな。
個人的にはリキュールがいいかな、カクテルもいいけどバーテンダーさんによっては場に合わせてアレンジしてきたりするから酒との距離感を測るならリキュールがいいね。
コイツ?クリアな黄色が綺麗で美味しそう?コレはスーズって言うリンドウの根っこのリキュール、確かピカソが愛した酒だったかな?人生に絶望した青の時代から薔薇色の時代に移り変わる一助となったのが色鮮やかなスーズだった…なんて話はロマン溢れると思わない?好みは分かれるけど実際美味いしな。
他にもリキュールは中々個性の強いモノもあって楽しめるぞ、個性が強すぎると一杯目にはオススメしないけどな。
え?随分楽しそうに語って飲むってか?それも酒の楽しみ方の一つだからな、「ただ目の前の一杯を楽しむだけでは無く、その一杯に辿り着く歴史を楽しまれるのも偶にはよろしいのではないかと」って誰かが言ってたっけな。
一杯目が美味しければ体調良しと判断して少しずつ強めの酒にしてくのがセオリーだ、美味く感じなければ体調悪しと思って早めに引き上げるのが正解なんだけど…結局美味しく感じるまで飲んじゃうんだよね。
カクテルで何頼むかは本当に好み、ただ知識として伝えられるのは基本的にショートは強めだから気をつけろ、くらいかな?この辺は一人で店に来てバーテンダーさんの問診を受けて処方してもらうのが一番なんだ…ここのバーテンダーさんなら間違いは無いね、今度一人で来てみれば?
なんで一人かって?諸説色々御座いますが究極的にバー遊びってのは一人で飲みに来るのがストロングスタイルだと思ってますからね、他の客の邪魔しない範囲でバーテンダーさんとの話をツマミに酒を飲むのがオツってなもんよ、相手は酒のプロですぜ?色々教えて貰えるから。
ちなみにベースになるスピリットを飲み比べしてみるのも後々の楽しみに繋がる、大体どんな味になるか予想できるし、時として予想を裏切る美味しさに出会えるから面白いぞ。
終盤はハードリカーかな、ナイトキャップってヤツね。
個人的にはロックスタイルの重めのカクテルかウィスキーだな、ウィスキーは飲み慣れてなければ若いのから飲んでみるといい…んだけど最近は全般的にお高くなっちゃったよなぁ。
興味があれば調べて見ればいいけどウィスキーの一般的な分類として世界五大ウィスキーってのがあるんだけど割愛、最初はスコッチとバーボンくらいを覚えとけばいいでしょう。
スコッチ、特にモルトはグラスを口に運んだ時の香りが豊かでモノによっちゃ独特のクセがある。
バーボンは逆に後味にフワリと香りが上がるのが多いかな。
あぁそうだ、ウィスキーとは長く付き合うつもりでいた方がいい、人の味覚は変わるんだ、ウィスキーの味が分かる様になる事を「舌が育つ」「口が出来上がる」って表現もあるくらいだからね。
ま、ここまで色々語ったけどあくまで楽しみ方の一つにしか過ぎない。
他人に迷惑をかけない範囲で楽しめればそれはそれで正解なんだ。
ただ忘れちゃいけないのはカウンターに座った君も店の空気を作り上げる要因、ファクターでありアクターであるって事なんだよ。
店の雰囲気を壊さずに楽しんでくれたまえよ、「店主や店員が店を作り、客もまた店を作る」けだし名言だと思うね。
え?日本酒やワインも教えて欲しい?ん〜、その辺の醸造酒は単体での楽しみ方は似たようなモンだけどマリアージュを考えた方がより楽しめるからなぁ…また来週辺りディナーにでも行くかい?
ワインならフレンチやイタリアン、日本酒なら焼き鳥に鍋に焼き魚とかが美味い居酒屋かな。
本当に色々あるのだぞ?
酒のイロハ 椿 恋次郎 @tubaki_renji
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