『色』最強なのはアオや

アオヤ

第1話

 「アオって最強だと思わない?」

幼馴染のアヤが突然隣りにやって来てじっと俺を見つめる。

「えっ、俺は蒼弥アオヤなんだけど…… もしかして俺の事言ってるの?」

彩の勘違いしてしまいそうな発言に俺はドキッとした。

「ハッ? 何言ってるの蒼弥。アナタのことなんか言って無いわよ。すぐソコを見なさいよ。眼の前の青い海と青い空の拡がりを。今、私達が見ている景色の80%はアオじゃない。私達は青の世界に居るのよ」

彩は眼の前の海に向って両手を広げて深呼吸してるみたいだ。

彩の一言は映画スターの決めゼリフみたいに感じる人が居るかもしれない。

でも、自分で言って悦に浸ってるみたいだ。


 彩が言うアオと云う色は繊細な色だ。

モチロン俺も繊細だ。

なんかガッカリして傷ついた気分になったのは気のせいだろうか?


「朝から何イチャイチャしてるのよ?」

後ろからやって来た彩の親友の絵里に冷やかされ……

「イチャイチャなんかしていない!」

俺と彩でハモってしまった。

「やっぱり仲いいじゃない。私は先に行くね」

彩は絵里に何か言いたそうだったが、さっさと行かれてしまい俺の方に再び振り返った。

「私達イチャイチャなんかしてないからね」

俺は彩に念を押され再びなんか傷ついた。

でも、彩は何故か離れて歩こうとはしない。


 桜の花びらは春風が吹くたびに彩の周りに雪が降るようにハラハラと舞った。

黄色い菜の花が俺達の歩く道に沿ってずっと続いている。

その向こうの民家の庭にはチューリップの花が咲きかかっている。

遠くの山にはうす緑の新芽が芽吹き出している。

春の花が色とりどりに咲いている。

そんな沢山の色があるなかで彩は『アオが最強』なんて言っていた。


 イタズラな春風が桜の花びらを連れて彩のスカートをめくった。

俺はドキッとしたが見ない様に遅れて横を向いた。

「見たでしょ?」

俺はオドオドしながら答えた。

「見てないよ……」

彩はイジワルぽぃ顔して俺に聞いてきた。

「それじゃ〜 アナタの名前は?」

何を言ってるんだコイツと思いながら答えた。

「俺は…… アオヤ……」

「ほら、見てるじゃない。嘘つき」

彩は俺の顔見て紅くなった気がする。


 やっぱり最強はアオや。

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