第52話 王女捜索4
「姫様ー、妹君がお呼びですよー」
「はーい、今行くからちょっと待っててー」
ノックをすると、珍しく姫様から返答が返ってきた。さすがに昨日の今日で、城を抜け出すような事はしないようだ。
「あっ、リュクスさん!」
「おー昨日の」
昨日焼き菓子をくれた侍女が声を掛けてくれた。
「昨日のクッキー美味かったよ、ありがとう」
「ホントですか!? 作ってよかったです!」
「ホントホント、姫様も大絶賛」
あまりに絶賛していたので姫様が八割くらい食ってたことは本人の名誉のために黙っておこう。
「え、あっ……ありがとうございました。じゃあ、また作りますね!」
侍女はそれを聞いて少し気落ちしたように見えたが、俺は気付かない振りをする。仕事をする上で距離感は大事なのだ。
さて、姫様はそろそろ出てきてもおかしく無い頃だが、準備に手間取っているらしい。
「姫様ー? まだですかー?」
……返事が返ってこない。
嫌な予感がして、扉を開く。目の前には昨日と同じ光景が広がっていた。
「はぁー……」
頭痛に頭を抑えつつ、窓の下を見ると角材で簡易的な足場が作られていた。昨日話したのはそういう事じゃないんだよなぁ……
仕方ない。いつも通り窓とカーテンを閉めて、俺は城下町へ姫様を探しに行くことにした。
実際の所、この日常は嫌いじゃないとは口が裂けても言えないな。
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