カラーを出してこ

最早無白

カラーを出してこ

「なんだその髪は! 校則違反だぞ、止まりなさい!」


 あ~あ、知らない先生に止められちった。面倒くさいなぁ……。


「あのですね~、私これ地毛なんですけど。ほら、目ぇ見てくださいよ」


 まぶたをつまんで、青色の瞳を見せてやる。一応日本とアメリカのハーフなんですよ、っと。


「ああ、そうだったのか! 他学年の生徒は、まだ顔と名前を覚えきれていなくてな……。止めてしまってすまない、行っていいぞ」


「あざ~す」


 遅刻しないよう、私は小走りで教室へと向かう。今回は割と話の通じる人で助かったなぁ。

 ほんと、この髪のせいでしょっちゅう止められんだよね。地毛なのに黒染めしなきゃいけないとか、マジでないんだけど。私はただ、パパとママがくれた体を誇りに思ってるだけだからさ。


「おはよ~……また止められちったわ」


 私以外全員黒髪の教室。こうして見ると、統一感があってちょっとカッコいいとは思う。その分個性はゼロで、私みたいな『フツーじゃないヤツ』が目立っちゃう。

 ま、特別視されるのは私も嫌いじゃない。たださっきみたいな弊害を食らわなければいいって話ね。


「おはー。てか、今週だけでもう三回目じゃん。先生もそろそろ覚えろって感じだよね」


「それな。他学年だから覚えてないとか知らんし。全校生徒で金髪とか私だけっしょ」


 もしかしたら他にもいるのかもしれないけど、集会ではうちのクラスだけ異様に浮きまくっている。もし私以外にハーフや海外の人がいたら、視線が分散されるだろうからね。


「……思ったんだけどさ、その調子で校内の有名人になっちゃえばいいんじゃない? 金髪青目のハーフ女子~、って」


「なに、知らない方が悪いって理論?」


「そそ」


 文字通り自分のってわけね。まあ、その手は正直アリかもしんない。他学年にまで私の名前が広がったら、もう髪色のせいで止められる恐れはなくなる。だって地毛なんだもん。


「じゃあ有名になるにはどうすりゃいいかなぁ?」


「う~ん、とにかく先生の目に留まるとか? 風紀の検査に引っかかるとか」


「それ本末転倒じゃん……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

カラーを出してこ 最早無白 @MohayaMushiro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説