雨の御霊 捌
雨月 史
KAC20247
夜明けの瞬間はいつ見ても心を高揚させる。
地平線向こうから陽が昇っていく色は、
新しい一日の始まりの色のようで、
それはこの世界に黒い闇から光を与える特別な色。神が世界を創造した時に闇と光を区別させたように……。
まだ薄暗い波打ち際を2人で歩きながら、
彼女の色について考える。
美晴は暖かくて笑顔が素敵で、僕にとってはやっぱり光輝く太陽の色。
赤?いや黄金色?どちらかといえば陽の昇る瞬間の空の
そんな事を思いながら僕は彼女の手を握った。
僕の右手に握られた彼女の手は、
昨日の事を気にしたのか、
ハンドクリームでコーティングされている。
手荒れは感じなかったし、
痛くはなかったけれど、
何と無く物足りなさを感じたりもする。
青い海は次第に赤みを帯びて、
まもなく東の水平線から陽の光が
静かに寄せる白波をうっすらと、
彼女を感じさせる
。。。。
夜明けの瞬間はいつ見ても心を高揚させる。
地平線向こうから陽が昇っていく色は、
新しい一日の始まりの色のようで、
それはこの世界に黒い闇から光を与える特別な色。神が世界を創造した時に闇と光を区別させたように……。
何故か頭にそんな事が浮かんだ。
確かに日の出の瞬間は気持ちが高まる。
けれども私は時々その光が疎ましく思える。
いつでも煌びやかな光をかざして、
まるで自分を中心に世界が回ったるかのような、眩し過ぎる存在。
私は……というか人間ならばきっと、いつも夏のギラギラした日差しはしんどいだろう。時には薄暗い雲に身を隠して静かな時を過ごしたいと思うのではないだろうか。私には柚彦みたいに私を受け止めてくれる様な雲の様な存在が必要だ。
人間というのは1人では生きていけない。
真っ赤に燃えた太陽の色よりも、
薄ら雲のかかった薄紅色が好きだ。
水平線の彼方の海の色と混ざった
夜明けの色が好きだ。
太陽には雲が必要なように、
私には柚彦が必要だ。
んー私って案外詩人ね(笑)
私の色って何色なんだろう?
柚彦の色っていったい何色なんだろうか?
私は……わからないや。
でも柚彦はやっぱり色んな私を受け止めてくれる無色透明?いやというよりか、私の違う色を引き出してくれる雲の様な白なのかもしれない。
「美晴?」
「ん?」
「どうしたのボーとして。」
「いや……柚彦の色って何色なのかな?って考えてた。」
「そうなん?僕も今美晴は何色か考えてあたところ。」
「へー偶然やね。それで私は?何色なん?」
「うん……夜明けの色。」
「なんやよーわからんな。」
「うまく表現できないけど、僕は美晴を見てたら一日の始まりが楽しくなってくる。美晴の色はそんな新しい日の始まりの色なんだと思う。」
「なんやそれ?結局何色かさっぱりわからんやんか(笑)」
「ふふふ。けれどもそれに引き換え僕は
「んーそれは違うと思うなー。私も柚の色考えていたけど、柚は透明やないよ。柚の色は人を包み込んで新しい色を引き出す白やないかな?」
「美晴……。」
見つめ合う2人。
明朝の海は思いの外に人がいない。
海鳥の鳴き声が遠くの方で響いている他には
寄せては返す波音だけが静かに聞こえる。
自然と体を寄せ合う柚彦と美晴……。
「そしたら
慌てふためき離れる2人。
その後クスクス笑いながら美晴が
「……そやな
「えーなんで?てっきり僕は
「だって最初に
「まー僕らの姿は見ている人間の想像力ありきですから、
それからしばらく3人(?)で手を繋ぎながら
親子のように浜辺を散歩した。
海は少しずつ太陽の光を帯びて薄い橙色に染まり、光は高く昇るに連れて次第に色を失い海も空も本来の青い色を取り戻してきた。
その時……。
「美晴、なんかカバンが光ってる。」
「いや柚彦のキーケースも。」
美晴の御霊は橙に輝きはじめ
柚彦の御霊は白い光を放ちはじめた。
二つの光は同じ方向を真っ直ぐに
一つの糸の様に光を伸ばした。
「さて、
そして彼らは雨の御霊の導き?により
最終的な目的地『雨夫婦の岩戸』へ向かう。
そこにはいったいどんな何が待ち受けているのか?!
「いや
「行かないんですか?雨夫婦の岩戸へ。」
「行く行く。でも腹が減っては戦はできぬ。
ていうやんか。伊勢うどん食べにいくで。」
……神の催促よりうどんを取るなんて、
やっぱり
雨の御霊 捌 雨月 史 @9490002
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