星屑姫とりかへて 〜バッドエンドでは主人公を斬り捨てた悪役皇子&主人公に転生してしまった男爵子息〜 メインヒロイン皇太女を救うためにがんばります!
蓮河近道
第一部
第一章 おやすみ星屑姫
〇〇〇 プロローグ
「————取りかえてくれよッ!!」
少年の両腕が寝台を強く叩きつけた。
その直前まで悲しみに沈み、静かに涙をこぼすばかりだった少年。その、豹変と言っていいほどの激昂に、部屋の空気が凍った。
「誰か、ボクと姫を取りかえて!! 誰かッ!!」
部屋の中には、少年の支離滅裂な絶叫にも一切の反応を返さない人間が、ひとりだけいた。
『姫』と呼ばれたその少女は、ただ眠っているだけのように見えた。
その華奢な肩をつかみ、少年は力任せに揺さぶる。
「
姫——ウハクと対照的に、少年の表情はひどく歪んでいた。血相を変えて、少女の閉じたまぶたがひらくよう呼びかける。怒鳴りたてる。
枕もとで、ほとんど悲鳴のような声で騒がれているのに、ウハクはぐったりしたまま身じろぎ一つしない。騒音にうるさそうにしてもいいはずなのに、お人形のように端正な寝顔のままでいる。
「ウハク! ……お兄様に答えてくれ!」
少年の顔。
それは、寝台に眠る少女の美貌と瓜二つだった。同じ白い髪、濃紺の瞳、なめらかな肌。それが余計に、ふたりの表情の違いを際立たせていた。
少年と少女は双子の兄妹だった。
「あああ……」
息を切らした少年は、悲痛な声でうめき。
「ちくしょう……、いったい誰が……なんのために……」
少年は、妹に負けないほど長い髪をぐしゃぐしゃとかき乱した。
「どうしてこんなことに……!」
どうしてこんなことに。
その話は数刻前にさかのぼる。
帝立学園の卒業パーティー。そこが少女の、そして少年の運命の分かれ道だったのだ。
……しかし、今の少年はそれを知らない。
それに本当は、誰かも、なんのためかもどうでもいいのだ。少年にとって。
「ウハクさえ目覚めてくれたら……!」
妹さえ目覚めてくれるなら、なんだっていい。
さもなくば、こんなことが起こる前に戻してくれ。
祈りながら少年——トカクは、数刻前の卒業パーティーを回想しはじめていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます