色の魔法使い

空山羊

カラフルな毎日を

私の名前はメリア=ジャン。

しがない魔法使いだ。


いや正確には使が正解だ。


私は今、日本という場所にいる。

ここは私がいた場所とは文化も文明も全く違う。


私を連行したオマ=ワリサンという守衛の様な衛兵みたいなやつの話と、私の身元引受人というものになってくれた、闇月真央やみつきまおという女子おなごの話では、どうやら私は異世界という場所にトリップしてきた放浪者というやつらしい。


思い出してみれば、私はあの時、レッドドラゴンと戦っていた。

一進一退の攻防であったが、私はレッドドラゴンの一瞬の隙を見出し攻撃をしかけ、トドメまであと一歩というところであった。


私はトドメにフリージングランスを選択し放ったが、その瞬間にレッドドラゴンもありったけの火竜のブレスを放ってきた。


すると相殺された力が暴発して私は数十メートル吹き飛ばされた。


でだ、私は吹き飛ばされただけで傷を負っていないのですぐに立ち上がり、再びやつを討とうとしたところ、私はこの日本の京都という場所に立っていたのだった。



幻覚か頭を打ったせいで意識がもうろうとしているせいなのかと現状に動揺していると路地裏から叫び声が聞こえた。


「キャー!やめてって言ってるでしょ!」

「なんだ?俺がレッドドラゴンだって知らねえのか?いいから言うこと聞け!!」


『ん?レッドドラゴンといったか?アヤツはそこにいるのか!』

私はそう思うや否やありったけの魔力をこめ路地を曲がった!


そして私は迷わず魔力を開放した!

「全ての魔を討ち払い給へ!ストームアクア!!」


「「へ?」」


私が魔法を放った先にいたのはレッドドラゴンではなく人が2人であった。

『これはマズい』と思ったが既に手を離れている魔法は消せるわけもなく、『2人を殺してしまった。』と思い、後悔しながら顔をあげたところ、水色や白や青色などにまみれている人間が2人立っていた。


「なにすんだこのクソが!ちっ!ペンキなんかかけやがって!クソが!」と言って男は走り去っていった。


「え?ナニコレ?ペンキ?え~洋服買ったばっかなのに!!」と怒る女性。


騒ぎを聞きつけ駆けつけたオマ=ワリサンというヤツに私は連行されたのであった。


その中で「何でペンキをかけたの?いたずら?それとも流行りのSNSとか?やっちゃダメだってことわかんないの?」等訳の分からぬことを言われ散々怒られた。


いくら『魔法』だと説明しても受け入れられなかった。

そんな時に先ほどの女子が現れて私を救ってくれた。


今はこの世界のパフェというやつを喰って話を聞いている。


この世界に魔法はないらしい。

だが、嘘だと私は思う。

賢者や魔王などが使う時間停止魔法が使われているからだ。


でなければ、このパフェというものがキンキンに冷えていて甘く美味しい訳がないからである!

それに真央が食べている『ぐらたん』という食べ物もアツアツで『ちーず』というものがノビノビなのも説明がつかんからだ!


だから「魔法だ!」と言っても笑われるだけである。

話しは平行線だが、美味いので今は置いておく。。。


そうして数刻話したところで真央が結論をだした。


私が異世界に飛ばされたのだと。


そういえば、先ほどのオマ=ワリサンというヤツも「異世界ものじゃあるまいし~」とかなんとか言っていたな。


つまり、そういうことらしい。


それから、私は真央の家に行った。


真央は『ゲイジュツカ』というやつらしく。

木を削り出した像やら何やらがたくさん家には置いてあった。

そして、真央の家で「魔法を使って欲しい。本当にでたら家燃えちゃうから火とかはやめて!」と言われたので魔法を披露してやったところ、残念ながら魔法はでなかった。変わりに使用したはずの魔法の属性に近い色のペンキが手のひらから放出されるだけであった。


凄く残念であった。

ここが異世界で私は何も持たざる者になってしまったと思ったからだ。


それからというと真央に『キブンテンカン』というやつで、京都というこの町を沢山連れて歩かれた。


この町は『ゲイジュツ』と『レキシ』というやつが溢れかえっているようで、素晴らしい建物や私の世界とは違う城(寺社仏閣というものをこの頃の私はわからなかった。)なんかがたくさんあった。


そんな私の心を動かしたのは『悟りの窓』といやつであった。


何の変哲もない丸い窓なのだが、何かスゴかった。

これこそ魔法なんじゃないかと思った!


智積院という場所では『イッパンジンニュウシツキンシ』とかいう場所にある、『日本庭園』というものを特別に観させてもらったが、本当に素晴らしかった。

『ワビサビ』だとか『日本の文化』だとかそんなモノが感じられた。


作り手の気持ちが思いが情熱が心に訴えかけてくる何か得体のしれないものがった。


「芸術って凄いでしょ!魔法みたいだと思わない?」と真央は笑いながら言った。


本当にそうだと思った。


その後、真央の家で真央の持つ『ホン』というもので色々見た。

『ゲイジュツ』というやつを観に『ビジュツカン』『ハクブツカン』というところにも足しげく通った。

『ホクサイ』や『ゴッホ』なんてのは稲妻が走った。


そして、私もこんな作品が作ってみたいと思った。


「メリアには魔法があるでしょ?それを使って作品を作ってみたらいいよ!油絵書いてみたら?うち使っていいから!」真央は笑いながら言ってくれた。


それが、私の芸術家としての原点だ。


今日は私の油絵個展の初日だ。

凄く緊張している。

だが、私の中にある思いが多くの人に伝わればいいと思う。


「皆さん!お待たせいたしました!色の魔法使い油絵作家メリアの個展開場します!」そんな真央の言葉で幕が開くのであった。







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油絵作家 メリア=ジャン(元異世界の魔法使い)

色の魔法使いと呼ばれる繊細かつ大胆な色使いで現代アート界において、唯一無二の存在なり、その作品は後世にまで広く親しまれた。

代表作『レッドドラゴン』(右半身がドラゴンで左半身が京都の不良をモチーフ)

『オマ=ワリサン』(補導?保護?されたときに対応してくれた警察官をモチーフ)『異世界』(自身のいた世界をモチーフ)

『天と地と』(完全創作物で後に権威ある賞を受賞)

『ワビサビ』(転移からまもなく作った作品で、侘び寂びをワサビと勘違いしており、日本庭園をワサビで再現した作品。ユーモア且つ斬新として新人賞を受賞)

大好物はパフェ、グラタン


芸術家 闇月真央やみつきまお(元異世界の魔王)

木を削り出したり、彫刻をしたり、流木を使ったアートに定評があり、代表作は流木を使用して作成された『神と魔王』。

凄くコンパクトな作品『アリの大行列』

建物を一棟丸ごと使用した作品『ゴーレム』も話題となった。

映画館で観た雷を操るの神様の持つハンマーに惚れ込んで作った『雷槌』

機械を身に纏いヴィランと戦うヒーローに刺激を受けた『流木勇者』なども代表作である。


闇月真央とメリア=ジャンは友人関係でアトリエをともにしていたこともあり、アトリエは『魔法の家』と呼ばれた。


その『魔法の家』は彼女たちの弟子たちが今日も魂を込めて作品を創っている。

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色の魔法使い 空山羊 @zannyou

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