幻想異邦紀行

赤井夏

饗宴にて

 いやはや、この何の芸当を持たぬわたくしめを、このような素晴らしき饗宴にお招きくださるとは。この喜び、私はおろか、世界中の詩才に満ちた詩人を何人集めたところで、到底言葉に表せぬほどでございます。


 しかしこの王国の栄華を反映したような壮観たる宴に、私のような男がただ飲み食いするだけでは、あまりにも不敬な振る舞いであると自分を恥じるばかりなのございます。


 なので、あの舞台に立つ妖艶な踊り子や、その脇に集まった楽団のように、私も一芸お見せして、少しでもあなた様が開いてくだすった饗宴に呼んでいただいた御恩を返せればと思ったのですが、あいにく私には何の芸も持ち合わせていないのです。


 そこでひとつ、あなた様に私の旅話をお聞かせしとうございます。私はこう見えて、かつて世界中を旅してまわった身であります。この世界には、それはそれは摩訶不思議な街や土地がございました。


 いつかあの街々も、あなた様のこの夜を知らぬ大国の土地となり、その栄光をますます世に知らしめることを、私は切に願っております。


 今から私が話すのは紛れもない事実。そして嘘偽りなくこの世界に存在する街々についてでございます。

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