罪禍と才華

サイトリドリ

序章

世界は日々戦争によって発展してきた

偶然にして必然となった物

他の"セカイ"ではわからないが

それがこの世界での戦争だ

ところで、戦場に立つのは一体誰だと思う?

兵士、海軍、陸軍...まあいわゆる軍人と呼ばれる人達を最初に思い浮かべるのが普通だろう

ん?君は戦場で死んでゆく一般人を思い浮かべたってのかい?

良い考えだ、だがこの世界で起こる現象(戦争)はそうじゃない

戦場で1番死ぬのは"奴隷"さ

奴隷が国に買われ戦場に立たされては"死ぬ"まで使い潰されるのさ


これは先も見えないほどの薔薇の道をたった一人で突き進むある奴隷少女の話


暗い、真っ暗で何も見えない部屋の中

僕は閉じ込められている

物心もついていないほど小さい頃に両親に奴隷として売られて以来

朝昼晩、同じような物を食べる日々

パサパサのパンと汚れた餌皿一杯の水

それをただ食べて飲んで寝るだけの退屈な日々だった

ある日、とつぜん頭に流れ込んでくるように声が聞こえた。

「よお、元気かぃ?」

僕に対して言っているのだろうが、僕は何も答えずにただ警戒していた。

「今日から"君ら"の主人が国王陛下になるんだぁ」

国王の下ということは戦場に立たされるのか...

「どこの国かは知らなくて良いだろう?君達は駒として扱われるぅ。それが嫌なら逃走でも何でもするんだなぁ」

「迎えは今晩来るからよろしく頼んだよぉ」

 そう告げられた瞬間、「ゴトッ」と鈍い音がなると同時に僕は眠った。目覚めると、僕は真っ白な京間6畳ほどの大きさの部屋の中にいた。中には壁と同化したA3サイズのガラス、綺麗な部屋にはあわない古びた和式トイレ、ボロボロの布団がある。

(鏡じゃなくて...ガラス?)

ガラスが発光し、勇ましい声が聞こえてきた。

「我が名はクオルツ、貴様ら"肉壁"の教官として派遣された。今日から強化訓練を行う、場所は逐一このガラス、"墓守の鏡"に反映する」

瞬く間に光が消える

(・・・)

天井を見つめた

鏡が光だし再び声が聞こえてくる

「モード変更、仮想転移結界始動」

後に白色だった部屋全体が緑、青、赤、紫と変色しドス黒い血のような液体が部屋中から湧き出る

僕は液体に溺れて気を失った

気がつくと、また真っ白な部屋の中にいた

(さっきのはいったい...)

僕は部屋を確認した

厳密に言えば’’僕のいた部屋’’だったはずの場所を

僕はより混乱した

さっきまでいた部屋とは異なる点が多すぎる

部屋は先が見えないほど広く、ボロボロの布団もガラスもない

そして1番気掛かりなのは僕と同じ人間がいるのだ

それも1万は超えるほどだ

近くにいた金色の瞳が特徴的な華やかな銀髪ショートカットのボーイッシュな女の子に話しかけようと試みたけれど、声が出ない

何度も声を出そうとすしたがやはりだめだ

頭の中に声が響く

(何度やっても無駄だよ、これのせいで話せないの)

女の子が自分の首に付いている透明な首輪を指差す

(なんで私がこうやって会話できるのか気になる?)

僕は頷いた

(私も詳しくは説明できないけど"異能力"ってのを使ってるの)

僕はいきなり何を言っているのか理解できなかったが

赤、緑、青、黄、紫、白、橙と変色する瞳が気になった

(綺麗...)

僕はつい、そう思った

(そう?次期に君も私みたいになれるよ)

そう伝えて彼女は他の奴隷に紛れて消えてしまった

「ピー、ピー、ピー」

どこからともなく音が聞こえる

音が聞こえる方向を探しているとクオルツの声が響く

「これより、合同訓練を行う」

周囲が急に騒がしくなり気になって回りを見た

奴隷一同の中には表情を曇らせる者、興奮のあまり走り回る者、泣きじゃくる者、興味がなさそうにずっと地面を指でつついてる者など

奴隷の皆は声は聞こえないがなんだか見た目上は賑やかになっていた。

「侵食改定神色変化出よコード:エイティピア」

突然発せられた呪文の様な言葉の後、真っ白な部屋は自分のいた部屋同様に緑、青、赤、紫と変色しだし、湧き出てきたドス黒い液体が一箇所に集まる。

再び部屋全体は白色に戻り、液体は姿形を変えていき、液体をまとった球体の"何か"になった

その異様な何かの真ん中からは大きな一つ目がこちらを覗いている

奴隷一同はその怪物から距離を取ったと思えば

怪物の周りを青い炎の渦が覆い、光の槍や巨大な氷の岩、無数の銃弾が怪物に向かって降り注ぐ

それが数十分続き奴隷が一人、また一人と倒れては雪の様に溶けていく

まるで何もなかったかのように

僕はただその光景を見ることしかできなかった

ただずっと呆然と立ち尽くしていた

攻撃が止み、周りを見渡したそこには僕を含む9人の奴隷と4本線の赤黒い足で立った一つ目がいた。

その中で可愛い猫耳にボサボサの金髪、澄んだ紫色の瞳を持つ少女が輝く光の剣を持ったかと思えば、片目の瞳が虹の7色に変色し一つ目の足目掛けて斬りつける

「ガタッ」

足が斬れると同時に他の奴隷2人が空中に飛ぶと猫耳の少女は怪物から後方にステップを踏みながら怪物から離れる

奴隷2人の赤いレーザー光線が両手から放たれる

怪物に直撃すると一つ目の怪物の足はちりの藻屑となったが目玉自体には大した損傷は見えなかった

レーザーを放った2人は攻撃を止め、僕ら9人はただじっと白い地面に転がった目玉を見つめ、目玉もこちらを見る

すると、一つ目が卵が割られるようにヒビが入り真っ二つになる

呆気に取られていると後ろから突つかれる

後ろを振り向いた

(ねぇ、君大丈夫?)

能力がどうと言っていた女の子がいた

(もう、あの子達死んじゃったよ)

(え...?)

周囲を見回すと、8つの飛び散ったドス黒い液体があった

(大丈夫だよ、実際に死ぬわけじゃないからクオルツが言ってたでしょ?最初の呪文で仮想なんちゃらどうたこうたらーって)

(一体どうなって...?)

(私の適当具合に驚かないんだね?まあ、それはまだ答えられないかな。そろそろ時間だからまたね)

彼女は手を振って溶けていきドス黒い液体となって地面に飛び散った

(...)

沈黙が続いた後、再び声が聞こえた

脳内ではなく物理的に響いた

「オマエハワタシダ」

僕の意識はそこで途切れた

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