君の色 【KAC20247】

姑兎 -koto-

第1話 君の色

君が居なくなって七日目。

僕は、休みを取って、ふらっと旅に出た。

君との思い出を辿り、君の面影を探す旅。


旅の終着地は、あの日、君にプロポーズした『地図に無いコテージ』


そこで、僕は、日がな一日、海を見て過ごす。

時と共に色を変える空と海。

君もそんな人だった。


三日目だっただろうか。

海に溶けていく夕日をバックに、砂浜に浮かび上がったシルエット。

逢魔が時。

『魔』でもいい。

君ともう一度出逢えるのならば。

そこまで行けば、僕も君と一緒にいけるのだろうか。

そう思い、立ち上がった刹那。

闇が世界を支配し、シルエットは消えた。


あれは、君だったのだろうか。


その夜、君の夢を見た。

どれほど願っても、今まで、君が夢に現れることはなかったのに。


夢の中の君は、笑って、怒って、泣いて、あの頃の姿そのままで。

そして、最後に、色々な色の君は、混ざり合い透明の光になって消えていった。



そうか。

君は、光になってしまったんだね。

様々な色が混ざり合うと透明になる光。

色を無くしても、君は、確かにここに居る。


お日様みたいだった君。

僕は、心のプリズムで君を取り出し、思い出の君と出会う。

そして、少しずつ、僕は、君の不在を受け入れていくんだね。


それは、寂しいことだけれど。

大事な事。



そして、君が居なくなって四十九日目の朝。

差し込む朝日の中に浮かび上がった君。

プロポーズした時と同じ姿で、僕を抱きしめて、

「そろそろ行かなくちゃ」と……。

僕の頬を伝う涙。

ぽとんと落ちた涙のしずくの中に光る君がいた。


僕もそろそろ行かなくちゃね。

元の世界に戻らなくちゃね。


大丈夫。

君の色は、僕の心の中に。

何処にも居ないけれど何処にでも居る。

それが、わかったから。




逢魔が土地に建つ地図に無いコテージ。

ここは、会いたい人に逢える場所。

僕は、ここで、二度、君の心と出逢った。



コテージを出て、振り返ると、光あふれる空き地が広がっていた。

あの光の中には、きっと、僕の想いも……。


ー完ー












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