白いフレアスカート

だるまかろん

 試着室から出て来た彼女は、白いフレアスカートに、黄緑色のTシャツを着ていた。

「その洋服、素敵だね。」

 僕は彼女に言った。

「さて、ここで問題です。この服の価格はいくらでしょうか。」

 彼女は僕に問う。

「うーん、二千円かな。」

 僕が適当に言った。

 彼女は頬を膨らませて「プンプンです。」と言って笑った。

「正解は……三千円です!」

「三千円なのか……。」

 僕はそう言って適当に相槌する。

「もう、ちゃんと見てる?」

 僕は正直、彼女の服装に興味がない。なぜ人間は着飾る生き物なのか、僕には理解しがたいことだった。

「この服を買うの。あなたの服もコーディネートしたいの。」

 彼女が僕の服を選ぶのに時間はかからなかった。彼女は、白いセーターにジーンズを履くように僕に言った。

「白いセーターなんて、汚れが目立ちそうな服だな。」

 僕が嫌悪感を示すと、彼女は少し悲しそうな表情をした。

「同じ白色の服を着て、デートしてみたかったの。」

 僕はハッとした。彼女が僕をそういう目で見ていたことに気づいたからだ。

「きみは、白色が好きなのかい。」

 僕が聞くと、彼女の表情は明るくなった。

「うん、大好きなの。」

「僕のことは好きか嫌いか知りたい。」

「好きだよ。」

 彼女は呼吸をするように、そんなことを言った。僕は呼吸するのも忘れて、思い切ったことをしたくなった。

「……僕と付き合ってみる?」

「うん、いいよ。」

 彼女はあっさりと承諾した。まるで呼吸するみたいに自然な流れだった。

「デートが終わったら、僕の部屋に来るかい。」

 彼女を自分の部屋に招待しようと試みた。

「ごめんね、お姉さんと夕食食べに行くことなったから、また今度誘ってね。」

 あっさり断られてしまった。僕は今日記念日だから何をしようとか、そんなことはよく分からなかった。だから彼女が何かを計画するまで待つことにした。

 あれから数日経ったが、彼女から連絡が来ることはなかった。

 僕たちは、かつて親友であった。それを、一歩前に進めることが怖いのだ。僕はデートが終わったあと、夜が明けるまで、布団の中にいた。隣に誰もいないことを、これほど寂しく感じた日はなかった。

 窓の外は雪が降っていた。それはまるで、彼女の白いフレアスカートのようにふわりふわりと降っていた。

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白いフレアスカート だるまかろん @darumatyoko

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