【和みたいとき】『いたずらお食事会』(イソップ物語:キツネとツル)
キツネが同じ村に住むツルを食事に誘いました。
キツネはいたずらが大好きです。
ツルを困らせてやろうと思いつきました。
食事に来たツルに、平らなお皿にスープをよそり、ツルの前に出しました。
「さぁ、さぁ、ツルさん、たーんとお食べ」
キツネは満面な笑みを浮かべてそう言いました。
ツルは「うん……」と返事をしましたが、目の前に出されたお皿を眺めて、
(どうしたらいいだろう……)
と悩みました。
ツルのくちばしでは、平らなお皿によそられたスープを飲むのが難しいからです。
キツネは悩んでいるツルを見ながら上機嫌で舌を使ってスープを飲みはじめました。
ツルには分かっていました。
いたずら好きなキツネが、自分をからかって楽しんでいることを。
だから、逆に上手く飲んで驚かせよう、と思っていました。
そして考えたすえ、ツルは行動に出ました。
ツルはテーブルの高さまで首を下げました。
そしてスープが入っているお皿を“ジーっと”凝視しました。
キツネはツルの行動が気になって、スープを飲むのを止めて見ていました。
ツルはお皿を凝視したまま、くちばしをお皿と水平になる位置につけました。
そして、くちばしを少し開き、そのまままっすぐ皿の中へ進め、スープの中に入れていきました。
そしてくちばしを少し持ち上げると、くちばしの下にスープが溜まっています。
それを見て、キツネはごくりと唾を飲み込みました。
ツルの動きが止まりました。
このままゆっくりと首を上に向けてスープを流し込もうか、一気に上に向けてスープを流し込もうか。
どちらにするか考えていたのです。
ツルは一気に首を上に向けました。
すると、スープが一気に口に入って来て、苦しくなって吐き出してしまいました。
それを見て、キツネは大笑いです。
ツルはあきらめずに、二回目の挑戦!
今度は、ゆっくり首を上に向けました。
すると、スープはゆっくり口の中に入ってくるのですが、くちばしの横から、どんどんこぼれてしまいました。
キツネはそれを見て、また大笑いをしています。
ツルはその後、何度も繰り返しているうちにコツを掴んできて、最後の方では上手にスープを飲むことができるようになりました。
食事が終わり、帰りがけにツルは言いました。
「今日は、おいしい食事をありがとう、今度は私のうちへ遊びに来てくださいな」
キツネはイヤな予感がしましたが「よろこんで!」
と笑顔で答えました。
数日後……。
今度は、ツルの家にキツネがやって来ました。
ツルはこの前の仕返しをしてやろうと考えました。
そして、細長い首の瓶の中にたくさんの豆が入ったものをキツネの前に出しました。
「どうぞ召し上がれ」
召し上がれ、と言われても、キツネはどうすることもできません。
どうしたって、この細長い首の瓶に、口が入りません。
ツルは、われ関さず、とばかりに、器用にくちばしを使い豆をポリポリと食べていました。
これはツルの仕返しだということに気付きました。
なので、この前ツルがしたように、自分もこれをなんとか食べてやろうと思いました。
そした、キツネは細い瓶の口を真上から、ガブリ、っと噛みつきました。
器用に豆を食べていたツルは、いきなりのキツネの行動に目を丸くして見つめました。
キツネは瓶の口を真上から噛みついたまま、しばらく動きませんでしたが、ゆっくり首を上げ、瓶をくわえたまま、逆さにしました。
すると、たくさんの豆が一気に口の中に入って来て、むせ返してしまいました。
ツルは目を丸くして見ています。
キツネはあきらめずに二回目の挑戦!
今度は、素早く首を上にあげました。
すると、豆は塊になり細い瓶の口で詰まってしまい、中々、口の中に入って来ません。
それでもキツネは何回か繰り返すうちにコツを掴み、豆が無くなるころには自分の欲しい分量を食べられるようになりました。
「ごちそうさまでした」
キツネとツルは食事を終えました。
二人の間に少しの沈黙が生まれました。
それを破るかのように、
『あのっ、』
と、同時に声を出しました。
お互い気まずそうに顔を下げてから、ツルが大きな羽をキツネに向けて先に話していいよ、という仕草をしました。
それを見てキツネは言いました。
「あのね、もう一度、今度は食べやすい器……、お互い、食べやすい器でもう一回、お食事しない?」
それを聞いてツルは目を丸くしながら、
「私も同じことを言おうとしてました」
キツネはキョトンとした表情でそれを聞きました。
そして二人は同時に笑いました。
数日後、二人はキツネの家で食事をしました。
キツネは皿の上に料理を乗せ、ツルは細長い口の瓶に料理を入れ、二人とも楽しく食事をしました。
おしまい
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます