チートスキル『とりあえず』で異世界を無双しハーレムを目指す!

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

第1話

「あなたの能力は『とりあえず』です」


「はい?」


「ですから、あなたの能力は『とりあえず』。とにかくあなたは『とりあえず』の能力を持っています」


 …………は?

 こいつは何を言っているんだ?


「……えーと、あれか? 問答無用でとりあえず相手をボコボコにできるほどに強い、みたいな?」


「いえ、そこまで強いわけではありません」


「……じゃあ、『とりあえず』の能力って何なんだ?」


「いわゆる『概念系』の能力ですが……。説明が難しいですね」


「それを説明するのが女神の仕事だろ!」


「いえ、女神の仕事は『基本、見守るだけ』ですので。百聞は一見にしかずとも言いますし、あなたには異世界に転移していただきましょう」


「待て! まだ能力の説明を聞いてない!!」


「十分に強い能力ですから、説明する必要はありません。それでは、いってらっしゃいませ」


 女神がそう言うと同時に俺の足元に穴が開き、俺は落下していった……。


「クソ女神があああああああああああ!」


 こうして、俺は異世界に転移することになったのだった。



***



「さて、どうしたものか……」


 ここは異世界なのだろうか。

 気づくと見知らぬ草原にいた俺は、あてもなくさまよっていた。

 そして偶然にも、少女が盗賊らしき男たちに襲われている場面に遭遇した。


「そ、そこのあなた! 助けてください!!」


「えっ!?」


 俺に気づいた少女は、なぜか俺に助けを求めてきた。

 俺に助ける力なんてないのに……。


「お願い! 助けて!!」


 少女の瞳には涙が浮かんでいて……。


「わ、わかった!」


 気づいたら俺は、少女を助けるために盗賊たちに殴りかかっていた。

 しかし一瞬のうちに、俺は盗賊にボコボコにされてしまった。


「ザコが邪魔すんじゃねぇ! そんなに死にたいのか!? お望み通りにしてやる!!」


「ま、待て! 話せばわかる!!」


「問答無用だ! くたばれっ!!」


 盗賊の1人がそう言うと、俺を殺そうと剣を振り下ろしてきた。


「や、やめてくれ! 『とりあえず』、剣を下げてくれっ!!」


 俺は目を閉じるが……いつまでたっても斬られた痛みが来ない。

 不思議に思って目を開けると……そこには剣を重そうに持っている盗賊たちがいた。

 ……ん?


「えっ!?」


 俺は混乱する。

 盗賊たちも同じく混乱しているようだ。

 そして……少しして、俺はようやく気づいた。


「これが……『とりあえず』の能力か!!」


 なんと、俺が授かった能力はこんな感じらしい。

 よくわからん能力だが、便利そうだ。


「よしっ! お前ら、『とりあえず』街に行って自首しろ!!」


「はぁ!? そんなこと誰が――って、体が勝手に!? あああぁーー……」


 俺の言葉を受けて、盗賊たち全員が走り去っていった。

 おそらく、あっちの方向に街があるのだろう。


「えっと、よくわかりませんが……。あなたのおかげで助かったようですね。ありがとうございます!」


 少女がお礼を言う。


「いやいや、大したことしてないよ」


 実際、『とりあえず』とお願いしただけだしな。


「いえ、そんなことはありません! この恩は絶対に忘れません!! 私にできることなら、何でもします!!」


 少女は興奮したように言う。

 まぁ、彼女からすれば俺は命の恩人か。


「なら、『とりあえず』君のおっぱいを触らせてくれ!」


「えっ……。それは、その……」


 少女の顔は真っ赤になる。

 俺の『とりあえず』の能力が本物なら、これでマシュマロを堪能できるはずだ。


「え、エッチぃのは嫌いです!!!」


「ぶほぉっ!!」


 少女の鉄拳が俺の頬にめり込む。

 どうやら、『とりあえず』の能力も万能ではないらしい。

 こうして俺は意識を失ったのだった……。

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チートスキル『とりあえず』で異世界を無双しハーレムを目指す! 猪木洋平@【コミカライズ連載中】 @inoki-yohei

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