彼女を感じさせる方法
明鏡止水
第1話
「ごめん、同じクラスになった時から……、好き……」
不器用な自分の、僕の恋心の告白から始まる。
場所は校舎の、人通りはそこそこな場所。
少ない場所と言えばいいじゃないかと言われればそうだけど、今日は行事があって人がいない。
この学校は治安も良くサボる人も滅多にいない。
せいぜい、本当に追い詰められたか。
家庭内で誰かが危篤だとか。
とにかくよほどなことがないとこの学校では早退も珍しい。
みんな元気で、活発で、恋も盛んだ……。
「ありがとう、うれしいっ……!」
春先。
制服からはみ出したセーターの袖や裾。
風になびく、校則を守りつつも軽く染めた髪色の光の反射。
手を口元に寄せて、合わせて、僕の告白を、喜んでくれている。
「え、ほんとに? あんまり喋ったことないのに……」
僕は不安になる。
僕が好きになったのは、普通の女の子だ。
同じ学校に通う、高校一年生。
でも、中学校も同じだったので存在は知っていた。
「でもごめんね、わたしっ、ごめん、せっかく好きなのにっ」
彼女が混乱し始める。
「なに? ……なんでも言って……」
僕も純情だった。
もしかして、もう付き合ってる人がいるんだろうか。その人とは別れられないし、僕の告白は受け入れられないとか。
彼女が近づいてくる、あたりをそっと見回して。
「わたし、すごく、えっちなの……っ」
僕は少し後ろに動いて、でも、すでに近づかれた時に手を取られていたから心がどうしようもなく、静かに彼女の言葉を待っていた。
「でも、ごめんっ、わたし!……っ」
顔が真っ赤だった。言うのに勇気のいることなんだろう。辛抱強く待とう、聞こうと彼女と向き合う僕に彼女は。
「わたし、えっちなこと、感じなくなっちゃったの……」
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