カフェ鳥の巣 (KAC20246)
歩致
やっぱマスターは鳥なんじゃ?
『トリあえずコーヒーはいかがですか?鳥だけに!』
職場でのパワハラやネットでのトラブルで心が荒んでいた私にマスターは優しく声をかけてくれた。そこはたまたま立ち寄った”鳥の巣”というカフェでここのマスターに会ってからはここのコーヒーがとても美味しいのと、マスターが可愛いのですっかり常連になってしまった。
ただ私がこのカフェにはまってからこのマスターは「鳥」なんじゃないかと思っている。
まて、私がやばい奴だと思って帰らないでほしい。私がこう思ったのにはちゃんと訳がある。まずマスターの容姿なのだが私と同じくらいなので身長164㎝でお胸がでかいのだ。そしてなんと言ってもあの髪!綺麗な長い黒髪で女の私でも惚れ惚れするくらいには艶がある。これに加えてマスターはびっくりすると鳩が豆鉄砲喰らったような顔という表現がとても似合うほどびっくりした顔が鳥っぽいのだ。
これは私がマスター鳥説を思いついたきっかけに過ぎない。
マスターは何故かいつも鳥のダジャレを言う。事あるごとに『トリあえずコーヒーはどうですか?』とか、『トリとめのないことですが……』とか、『このケーキとってもしっトリとして美味しいのでおすすめですよ!』とかとか上げればキリがない。
最初はこれらは全てキャラ付けなんだと思っていた。だからある日マスターに「鳥肉がやっぱり色んな料理が作れて好きなんですよねー。」と言ったら明らかに動揺して『い、いや鶏肉じゃなくても別にいいんじゃないですか……?ほ、ほら牛とか豚とか!』
これはもう結構黒じゃないか?と思って私は一個大きな賭けに出たのだ。テレビで聞いたことある人もいるかもしれないが鳥はカプサイシンによる辛みを感じないから唐辛子なんかをそのまま食べられる。そこでマスターの差し入れに持ってた水に抽出したカプサイシンを結構多めに入れてみたのだ。
試しに飲んだら喉が焼けるかと思った。
その水をマスターは『なんか普通の水とは違うかもしれないです!これがトニックウォーターならぬトリックウォーター!?鳥だけに!』なんて言っていた。
これは疑うなという方が無理があるのではないだろうか。ただ、もし鳥だとするとマスターは一体なんの種類の鳥なのか気になってくる。
今日もまたカフェ鳥の巣に足を運ぶ。そこで今日こそマスターの正体を当てて見せる!
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「こんにちは、マスター。今日も元気?」
『おお、今日も来てくれてありがとうね。私はこの通り元気だよ。トリあえずコーヒーかな?トリだけに!』
「うん、マスターのコーヒーお願いします。にしてもマスターって鳥好きだよねー。」
『そ、ソンナコトナイヨ。トリあえずコーヒー淹れるから待っててくれるかい?』
「うん。そういえばさーこのカフェの内装ってバーみたいだよね。もしかして夜の営業とかやってたりするの?」
『いいや、やってないよ。最初はバーに憧れていたのだけど私は夜目がきかなくてね。こうやってバーの内装で日が出ている間だけ営業をしているのさ。』
「夜目がきかないって……鳥みたいですね?」
『い、いやいやいや!そんなことないよ!そんなトリッキーなこと言わないでよ。鳥だけに。』
「むむむ、ほんとですか?」
『ホントホント……ほ、ほらコーヒー淹れたよ!トリあえず飲んで飲んで。』
「……やっぱりマスターのコーヒーが一番美味しいです!なにか特別なものでも入ってるんですか?」
『いや?特別な物なんて入っていないよ。強いていうならお客様への感謝をバーッド注ぐことでしょうか?鳥だけに!!』
「ほほう……あ、マスターアップルパイ一つお願いします。」
『ありがとねー。……はい特製アップルパイだよ。』
「わー、いつみても美味しそうなアップルパイね。そういえばマスターはバーに憧れていたって言ってたけどお酒が好きなの?」
『いえ、私はお酒が実はダメなんです。ちょっとでも飲むと倒れてしまいまして。』
「ならどうしてバー?」
『バーのお客様と近くでトリとめのないお話をしたり、人生相談なんかを受けたりといったものに憧れていたんです。それも今のカフェで叶ったので大変満足です。』
「へー、いい話じゃんマスター。ところでマスター?」
『はい?』
「鳥ってアルコールダメらしいね?」
『いやいやいや!私は鳥じゃないですって!!』
「まだ何も言ってないけどね。」
『ウッ……なんのことだか?』
「んふふ、今日はお休みだからじっくりお話しよっかマスター?」
『お、お手柔らかに……。』
「トリあえずコーヒーのおかわりをお願いね、マスター。鳥だけに!」
カフェ鳥の巣 (KAC20246) 歩致 @azidaka-ha
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