ハラカラ ―火花転身―
はくすや
ここからのプロローグ
人生には転機と呼べるものが何度か訪れるものだ。
この春高校二年生になる俺がしみじみと思うなどおこがましいかもしれない。
しかし実の親の顔を知らず、祖父と叔父一家に育てられた俺には波瀾万丈な未来が待っているのだと幼いころから思っていた。
まさかこんな突然にその転機のひとつが目の前に現れるとはさすがに予期していなかったが。
進路を考えなければならない時期に、祖父のところに父方の叔父が訪ねてきた。
父方祖父の余命が長くないから俺が成人してから果たす約束を前倒しにしてくれないか、という依頼だった。
何でも俺の父は全国に病院を展開する財団の理事長の息子だったらしい。その息子である俺は財団の後継者候補ということだ。
俺の父は俺が生まれる少し前に事故で亡くなった。母もまた俺を生んで間もなく病死した。母方祖父が俺をひきとり叔父夫婦とともに今日まで育ててくれたのだ。
こどもを預けておいて大きくなったからこちらの後継者になれというのも身勝手な話だ。
しかし俺は、母方祖父が背中を押してくれたこともあって、父方祖父とその一族に会ってみる選択をした。
いつまでも叔父一家の世話になることもできない。常々そう考えていた俺は父方一族の厄介になって新しい世界を見てみたいと思ったのだ。
何でも自分の目で見て確かめる。気に入らなかったらその時はその時だ。
それが母方の家訓だった。
だから俺は上京することにした。
高校は転校だ。
合わなかったらいつでも帰って来いと言われているが、まあ簡単には帰らないだろう。
これは俺の転生いや転身だ。
俺は、見送りに来てくれた家族や友人たちに手を振り、新天地に向けてバスに乗った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます