青い海、黒い津波

学生作家志望

あの日を思い出す

※この話は僕が体験した話ではなく東日本大震災を元に作成した創作です。ですが、リアルな表現を使っている場面がありますので、途中で気分が悪くなってしまったら、すぐに読むのをやめてください。お願いします。




海の音はいつも心を休ませてくれる。同じ音なのになぜこうも何時間も聴いていられるのだろうか。だが、やっぱり海を見ると、あの日のことを考えてしまう…


小さい頃からずっと可愛がってくれたじいちゃんの家は海に近い場所にあって、津波が来てしまった時に、家が流されてしまった。じいちゃんが何をしていたのかはわからないが、逃げ遅れてしまった…ということと、現在も行方不明だということしか、わかることはない。


行方不明なのはじいちゃんだけではなく、被災した地区の人々は現在でも行方がわかっていない人が多い。当然、残念だが、被災したあの日に亡くなってしまった人も多数いる。


思い出や絆が、あの黒い波にものの数分で奪われる。町を飲み込んで黒くなったとされたあの巨大な波は、町だけではない大事なものを飲み込んでいった。


油断をしていたんだ。どうせまた大したことのない揺れだと思っていた。アナウンサーがテレビで叫ぼうと、近所の人が逃げろ!と叫ぼうと、結局体が動く時は黒い波が目の前に迫ってきた時だった。


友達は涙を流して言った。友達の父親の親友が、目の前で波に飲み込まれたという。残酷なことに、人を助けようと考えれば考えるほど犠牲者が増えていくのがこの世界だ。波に飲み込まれそうな人の腕を引っ張ったって結局2人とも流されるんだよ。


本当は助けたい…、みんなと逃げたい。でもあの日僕がした行動は…ただ高いところに逃げる。後ろを振り返らずに、ただ走ることしか出来なかったんだ。


そして辿り着いた場所は孤独の避難生活。友達の姿なんて見つかるはずもなかった。

いつもあんなに笑ってた町の人達も、下を向いて黙りこくっていた。


でも、絶望だけじゃなかった。大切なことを知ったんだ。てっきりもう終わりだと思ってたものが、まだ続いていた…!そんな感じ。全国から沢山のメッセージと支援が来ていた。


美味しいものを食べて、やっとみんなに笑顔が戻った!


いつもは「いただきます」も言わないような白い米に僕は初めて泣いたんだ。


まだ終わりじゃなかった…まだまだ、生きてやる。強い思いと、希望が生まれた。




ザーッ


「あの日からもう10年以上経ったのか。まだまだ記憶に残ってるってのに…」


時間は本当にあっという間だった。あの楽しい時間は、簡単にあっさりと流されていったんだから。


あっという間なんだ、本当に。いつなにが起きたっておかしくはない…


だから、何か伝えたいことがあるなら今すぐに走って伝えにいったほうがいい。どんなに離れていても今はそれが出来る時代なんだから。


「綺麗だな。今日も。」


青い海がピカピカと光り輝き、眩しい。


「こんな日がずっと続けばいいな。」


足を優しい波が包み、青い海へと戻っていった。

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青い海、黒い津波 学生作家志望 @kokoa555

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