10

 洞窟の奥にはとても大きな川が流れていた。(真っ暗だけど水の流れる音と手で触ることのできる大量の流れる水がそこにはあった)

 地下水なのだろうか? 詳しいことはよくわからないけど、そこには確かに川は存在していた。

「三途の川なのかな? この川」大きな川を懐中電灯の灯りで照らしながら仁くんは言った。

「流れが強いな。これじゃあ向こう岸まではとてもじゃないけど渡れないな」

「ここで大丈夫だよ」

 仁くんを見て咲は言った。

「ここでいいのか? それじゃあここで占いをするんだな」

 仁くんの言葉に咲は返事をしない。

 仁くんは不審に思って咲を見た。

 すると咲はじっと川の近くに立って仁くんを先に見つめていた。

 とても真剣な顔をしている。

 仁くんは立ち上がり(川の水を触るためにかがみ込んでいた)懐中電灯の丸い灯りの中にいる咲を見る。

「咲」仁くんは言う。

 咲はいつの間にかにその体に巻いていた白いロープを解いていた。そのロープの先を手のひらの上に乗せている。

「咲。危ないからロープまけよ。解けちゃったのか? 相変わらずどじだな」明るい声で(戯けた雰囲気で)仁くんは言う。(仁くんは本当に優しいな)

 咲はロープをそっと闇の中に放り出した。ロープの消えていく先を見て、それから仁くんに視線をまた戻した。

「仁くん。大切はお話があります」咲は言う。

「なんだよ。こんなところであらたまって。恋の告白か?」仁くんは言う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る