襲撃1
午後の授業を前にして異変は起きた。
校庭で大きな破裂音のような音が鳴り響き生徒達の注意を引く。何が起きたのかとざわめく中で校庭に次元の穴が開き無数の魔物が出現する。
(おいおい、嘘だろ!?学校に!?)
「っ!おい!お前ら教室から絶体に出るなよ!」
八坂がいち早く叫び教室を飛び出す。
「八坂!一人じゃ無理だ!」
敵の数を見て翔も慌てて教室を出る。
(俺でも数相手に出来るか?…黒姫間に合うか分からないが連絡しないと…)
携帯を操作しながら翔が廊下に出ると河内、猪尾、西園寺が一緒に飛び出して顔を見合わせた。
「オレ…思い出しちまったよ、あー皆もか?」
「ああ、僕もだ。どうして…いや、とにかく急がないと!」
皆の戦う意思に翔は困惑するが次の西園寺の言葉で覚悟を決める。
「浜松、どうやって戦えばいいの?」
混乱しながらも指示を求められて翔は手本を見せる。
「精霊の名前を呼べば魔物の前なら武器が出てくるはずだ、八坂一人だけで行ってしまった、急ごう」
全員生徒を避難させようとやってきた先生の制止を振り切って校庭に向かう。その道中で雑魚を撃退しながら西園寺が避難の手伝いを志願する。
「ナゴエルの能力的に私は皆の体育館への避難を誘導するわ」
男子三人は黙って頷き西園寺と別れて校庭を目指す。
八坂一人、ダメージもそこそこに何とか耐えていた。猪尾が大声で呼び掛ける。
「よぉ番長!手助け必要か?」
八坂はチラリとこちらを見るが無視してまた敵に拳を叩き込む。
相手していられないと河内が作戦とも言えない提案を出す。
「僕らは手分けしよう、校内にこれ以上侵入させたら駄目だ!」
「だな、横に展開ってヤツだ」
「いや、違うが?」
下らない問答をしている暇はないと急ぎ散開して校舎に侵入出来そうな箇所をそれぞれ守備しに移動する。
(組織的な襲撃か…?まさかあの狐が?)
隣に呼び出した焰鬼から睨まれて今は無駄な思考を捨て刀を構える。
「氷雨、窓と出入口を氷で塞いでくれ」
焰鬼と共に向かってくる小鬼を蹴散らしながら守りを堅め前進する準備を進める。
昇降口を固め終えて敵の出現ポイントを封じに行くことにする。
「消耗する前に打って出る…行くぞ!」
校庭の中心に向かって走り出す。
中央では大きな緑色の鬼が待ち伏せていた。
「ほう、来るか」
「あんたが大将か?」
翔の言葉に答えること無く鬼は金棒を振りかざし攻撃してくる。焰鬼が現れて間に入りカウンター気味に敵の顔面に拳を一撃叩き込む。
「ぬぅ!?」
焰鬼の奇襲に驚き出来た隙での小気味良い音の一撃が入ったはずだが敵は軽くよろめくだけで体制を立て直し翔を賛辞する。
「同胞か?従えてえるとは…やるではないか」
ピンピンしている姿に焰鬼も心なしかムッとしていた。
翔は敵対している奴と相棒を一緒にされて同じくムッとする。
「お前ら無法者とは違う、焰鬼は精霊だ」
「精霊?まぁよい、かかってこい!楽しませろ!」
(氷雨には気付いてない、狙うならそこだな…)
翔は腰に二本差しのスタイルで刀を引き抜き構え焰鬼と力を合わせてボスに立ち向かう。
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