第24話 彼女ができました
今、ちょうど春休み前だ。
キチレンジャーと、白崎と一緒に、校内のフリースペースで駄弁ってる。
今日はなんだか、全員早めに登校しちゃったんだよな。
「へえ、ダンジョンの魔物を」
「そうそう、顔と身体が好みだったんでな」
「となると、人に近い魔物を切ったのかい?」
「そうだな」
「興味深い……!写真はあるかな?」
「ほら、これ」
俺はそう言って、ハーピィの斬殺死体の画像を見せる。
「おおおおっ!素晴らしひ!この子ははだかなんだね。ぬらりとした女性器に、はらわたがまたぬらりと漏れている……!これは腸かな?きれいだ……」
相変わらず、青峯は変態だった。
女体に向けるのが性欲じゃなくって、芸術鑑賞感覚なのもタチが悪い。
「インキュバスはいましたか?!」
と黄場。
こっちは、青峯と違って、百パーセント性欲だ。名前に反して、頭の中は真っピンクである。
「まだ見てない。そもそも、モンスターは普通に殺しに来るぞ」
「そうですか……。では、魔物との交尾について訊ねたいのですが……」
「人の情事について訊ねるか普通……」
「締まりはどうでした?」
「よかったぞ」
女の締まりの良さについて、女が訊ねるか普通……。
相変わらず頭おかしいなこの女。
まあ、答えるけどさ。
「赤堀クン!なんか銭になるもんは?!」
「色々あったぞ」
「おおっ!やっぱり時代はダンジョンやーっ!」
緑門をあしらう。
「アタシ、ペット欲しいんだよねー!でっかいの!」
「まあ、色々いたぞ」
「マジで〜?なんかとってきてよ!」
「モンスターは自分で捕まえないと言うこと聞かないぞ?」
桃瀬もあしらう。
ん……?
「せ、先輩っ!自分、モンスターとエッチするのは良くないと思うんすよ!!!」
お?
「なんだよ、白崎」
「やっぱりこう、人間の女の子とじゃないとダメっすよ!」
「良いだろ別に」
「だってほら、アレっすよ、獣姦!」
「問題あるか?」
「色々あるじゃないっすか!ほら……、戸籍とか、外聞とか!」
んー?
そんなものを気にしたこと、今まで生きてて一度もねーんだがな。
「それがどうした?」
「と、とにかくダメっす!ちゃんと人間の彼女を作るっすよ!」
えー……?
「なんか今更なぁ……。人間の女って、ちょっと返り血浴びて帰ってくるだけでピーピーうるせぇしな……」
と、俺が言うと。
「残念ながら当然なんよなぁ……」
「そりゃそうっしょ?」
などと外野が言ってきた。
うるせぇ黙ってろ。
いや実際さ、絡んできたチンピラを物理的に畳んだり、ゾッキーやらヤーさんやらを血祭りにあげた程度で、腰を抜かして悲鳴を上げるような腑抜けた女、こっちからお断りだボケ。
時代錯誤と罵られようが、俺は剣士だ。
武道家が血に塗れて何が悪い?
「さ、探せばそんなことで怒らない女の子もいるっすよ!」
と、白崎が言ってきた。
は?んな訳ねーだろ。
「もう六人と付き合ったけど、そんな女と会ったことは一度もねぇぞ」
「で、でも……!と、とにかくっ、モンスターはダメっす!」
なんなんだか……。
意味わかんね。
女の癇癪ってぇの?
アレか?今流行りの女性の権利!!!みたいなのに目覚めたのか?だりぃわー。
「うるせぇな……。じゃあなんだ?お前が彼女とやらになってくれんのか?」
と、俺が冗談めかして言った。
すると、白崎は……。
蚊の鳴くような声で。
「せ、先輩がそれでいいなら、自分は、先輩のカノジョになりたいっす……」
とか言った。
「「「「「「おおおおおおおっ!!!!」」」」」」
えっ。
「いやいや……、冗談だろ?」
「……本気っす」
いやいや……。
「おめでとー!」
「ヒューッ!」
「祝福しろ、結婚にはそれが必要だ」
外野が騒ぎ立てる。
勘弁してくれ。
「あー、アレだ。俺は浮気するぞ」
「自分が一番なら、どんなに浮気しても怒んないっす」
「返り血まみれで」
「気にしないっす」
「戦闘狂で」
「強い先輩が好きなんす」
あー……。
まあ、ダンジョンに専念すれば彼女とやらはいなくても困らんし……。
振られても良いかね……。
「……分かった、よろしくな」
「はいっす!」
彼女ができてしまった。
今日は終業式、授業はないんですぐ帰れる。
「やは、おじゃま虫のぼく達は、お先に失礼させてもらふよ」
「カノジョさんと仲良くな!」
クソが……。
こいつら、煽れると思ったら全力で煽りやがる……。
ぶち殺してえ……!!!
そして、クラスの前に……。
「先輩っ」
彼女、白崎杜和が迎えにくる。
「………………」
「あっ?!何で嫌そうな顔するんすかー?!」
「いや、なんかこう……、違うなって」
「何が?!」
「俺はほら、もう、女とかかったるくてさあ……。やりたい時にやらせてくれりゃそれで良いんだが……」
もう、女のご機嫌取りに記念日覚えしてデートしてー、とか嫌なんだよな。
「わ、分かったっす!いつでもばっちこいっすよー!」
「違うな……」
「な、何がっすかー?!」
家に連れ帰ってみた。
「うわ!本当にモンスターだ!」
「ピィ?」「キュリ?」
「可愛いだろ?」
「じ、自分も負けてないっすよ!先輩の一番は自分っす!!!」
あー……。
「すまんが、俺は愛ってのがいまいちよく分からねーんだ」
「そうなんすか?」
「まあ、抱きてぇなー、とかは思うけどよ」
「それが愛なんじゃないっすか?」
いやちゃうやろ。
「性欲だそりゃ」
「抱きたいくらいに好きってことなんじゃないんすかね?」
「そりゃまあ、そうなのかもしれんが……」
「自分も、愛情とかってのはよくわかんないっす。けど、相手が『欲しい』って思うのは、多分、愛情の入り口なんじゃないっすかね」
うーん?
そう言う考え方もある、のか。
「自分は!自分は、先輩の『一番』になりたいんす。先輩の一番になって、先輩の、こ、子供を産みたいと思ってるっす」
ふむ、シンプルだ。
「そう言うもんなのか?女ってのは、もっとこう、男の学歴だの顔だの、ステータスってもんを……」
「分かってないっすね、先輩は。女が本気で惚れるのに、学歴だの顔だの、関係ないっすよ。『その人の子を孕みたいか』……、それだけっす」
へえ……。
「最高だな、シンプルで良い。ま、流石に高校は卒業しようぜ」
「はいっす。そしたら……」
「おうよ、孕ませてやる」
「えへ、最高っすね!」
何だ、女ってもんもシンプルなんだな。
楽で良いぜ。
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