これは僕が人間を辞めたお話
凪滝
プロローグ
酸素65%、炭素18%、水素10%、窒素3%、カルシウム1.5%、リン1%だっけ?
それに魂の重さとか色々あるらしいけど、これで人間はできているらしい。
これを知った僕は思った。この全ての物質が集めれば人間を作ることができるのか?答えはNOだ。
やろうと思えばできるのかもしれないがそれはおそらく人間ではない何かだろう。
実際、人間を作るという研究は理論的にいけるらしい。遺伝子改良や医学的な分野でやろうとしたことがあるというのは聞いたことがある。しかし、それは実際には行われていない。人間を作るのが禁忌に値するとかやってることが人間じゃないとか色々と理由があるらしいが、生命の誕生を目的とするのは世間一般的には避けられることらしい。
一部の国の裏側でこっそりと人間作りを行なわれていたとしても僕達が知る由もないが、僕は仮にそんなことをやっている人たちがいるなら聞いてみたいことがある。
「何故人間を作るのか」
理由は様々だろう。例えば自分達に従順な人間を作りたい。大切な人を蘇らせたい。臓器を作り出して他人に移植できるようにしたい。個人的思想から、誰かの為とかくだらない理由までいくつもある。
だが、僕の理由よりは100%マジだろう。
僕は人間を作って殺したいが為に人間を作っているのだから。
そんな僕はついこの間、変わった女と会った。
「人間は酸素65%、炭素18%、水素10%、窒素3%、カルシウム1.5%、リン1%にその他もろもろでできている」
この出会いは僕の人生を
「そんな人間の腕を切り落としたらどうなる?全体的な質量は減少するが、この割合自体は大きく変化はしない。それは普通に人間と言えるものだ」
いや、僕の人としての人生を終わらせる
「なら、この割合を変えたらどうなるのだろうか。例えば人の炭素量を80%にしたらどうだ?それは人ではない別のものになっているはずだ」
そんな狂った出会いだった。
「私は人間を別の生物に変えたいんだ。人間という生物の枠から外し、新たな生物として生まれ変わらせたい。普通に割合を変えただけなら、その人間は簡単に死ぬ。それはつまらないだろ?」
僕はこんな女の狂った誘いに
「だから君が人間を作ってくれ。成功例がない?心配するな、私が手伝ってやる。私と君が手を組めばどんな化け物だって作り出せる」
余りにも心が惹かれてしまった。
「君の目的は知っている。君の目的を私の目的の通過地点にしてやる。私と組むか、研究を捨て、そいつらから逃げるか選ぶが良い」
選択肢はない。余りにも魅力的なのだから。
これは、人間を作りたい僕と、人間を辞めさせたい彼女との人間を終わらせる物語。
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