転嫁



 ハゲの上司のお嫁ちゃん(ハゲ曰く)が、無事に子供を産んだらしい。

 そりゃあめでたい。

 新たな命の誕生は喜ばしいことである。

 それが夫には似ても似つかない金髪碧眼の麗しベイビーであっても、喜ばしいことに変わりはない。


 ちなみに。

 上司のリアクションは以下の通りである。


 『隔世遺伝って奴らしくてねえ〜! びっくりだよね!』


 びっくりだよ。マジで。

 俺は今、心底驚き散らかしてるよ。マジで。


 マジかお前。


 マジか? 現実逃避とかじゃなくて?


 まあ、この鈍感さと無頓着さがなければ、こんな会社で働き続けることなどできないだろう。

 働き続けたところで大した給料を貰える訳でもないのだが、お嫁ちゃんは一体何処が良くてこんなハゲと結婚しようとしたのだろうか。


 もしかすると、俺には理解できない美点があるのかもしれない。

 あったとしても一ミリも知りたくはないが。


 『我が家のかわいいおひめちゃま』こと金髪碧眼の麗しのベイビーの写真を見せてもらったが、可愛いおひめちゃまの身体にはべったりと赤黒い四肢が絡まりついていた。

 あーあ。


 親の因果が子に報い、なんて、クソほどの洒落にもならねえ話である。

 親の成した業なのだから、無論親自身が責任を取るべきである。

 よろしくね。





 ところで。

 社長宅にて行われるクソッタレパーティの準備中、ふらりとやってきた社長が、『松馬くんの奥さんだけれども、あの娘さんは良くないねえ』とぼやいていた。

 別に霊が見えるだのなんだのという話ではない。

 この世では、霊感よりも興信所の方が役に立つ場合が多いというだけの話だ。


 昇給とか興味ある?と聞かれたので、いえ全く!と元気に答えておいた。

 我が社では役職が上がらん限り給料は決して上がらんのである。








「本当に可愛いですね! 一度課長のお家にお伺いしたいくらいです!」

「えええぇえ〜〜〜??? 琴浪クン、も〜〜相手がいないからってうちの姫ちゃまを狙ったりしてないだろうねえ〜〜もォ〜〜!!」

「ハハッ!!!! 勘弁してくださいよ!


 勘弁してくださいよ!!!!」



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