落書き



 会社の近くの道路に、赤いペンキがぶちまけられていた。


 二車線の真ん中に缶をぶちまけたような形だ。

 それを囲む形で、刷毛で塗り伸ばしたような文字が書いてある。


 手だとか、足だとか、目玉だとか、あとは安ドウヤス弘だとか。


 最後のは人名である。

 恐らく、画数の多い漢字は潰れるから諦めたのだろう。


 清掃される気配もなく、赤いペンキは何日経っても広がったままだった。

 噂によると、時折、何かが地面にぶつかって破裂するような音が聞こえるらしい。



 ぶちまけられた赤いペンキの真ん中は、日に日に黒ずんでいる。

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