着ぐるみ
何も知らん若者を騙くらかして意味の分からん教材を売りつけるイベントのマスコット役になる羽目になった。
セキセイインコを模したカラフルで愛らしい見目の着ぐるみだ。
頭はともかく身体の作りがほぼ人型なので、絶妙に気色が悪い。身体の方にも金かけてやれよ。
社長の凄いところは、このイベントを本当に必要なことだと信じ切ってやっていることである。
自分が若者を救うという使命感に燃えていて、心の底から啓蒙のためにやっているのだ。
まあ、そんぐらいでないと社長なんて出来ないのかもしれない。実際、上の方はそういう部分に惹かれてついていっているようだし。あとは金。
着ぐるみを着て端に立っているだけの簡単なお仕事だ。
簡単な上に必要かどうかも分からない仕事すぎて欠伸が出る。
誰か代わってくんねえかな、と思っていたら、昼休憩の後にトイレから着ぐるみが出てきた。
先程まで俺が着ていた着ぐるみである。
のそのそと、初めて四肢を使うような動きで歩いていった着ぐるみくんは、そのまま俺の代わりにイベントの端に収まっていた。
なんてこった。
サボれる。
やったぜ。
近場の漫喫に逃げて、終了時間まで漫画を読んで時間を潰してから戻った──ら、当然のように怒られた。
イベントの最中、突如として着ぐるみがぺちゃんこになったそうだ。
外れて転がった頭から真っ黒な液体が溢れて止まらなかったせいで、ビビった学生たちが全員逃げていったらしい。
お前がちゃんと管理してないからこうなるんだぞ、だそうだ。
知らねえよハゲ。だったらお前が入れハゲ。
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