高校生時代が旬の経験を積もう


【不可逆な経験】

 これは一見書き手だけのことにも思えるけど、読み手だって経験が必要な場面が出てくる。例えば死別のシーンは悲しいけど、現実で死別を経験していると、それの感じる度合いが天と地ほど違う。

 

 そもそも創作物って「書いたら完成」じゃなくて、それを読み手にどうとらえさせて心を動かすかまでがワンセットだから、経験をしとかないとどんな小説もし、読書としての小説体験も完全にはならない。

 いわば金槌とか、洗濯バサミに近いんだ。使われて初めて意味がある。


 とにかく色んなことを経験するに越したことはないけど、そこには優先順位というものがある。

 かの有名なひろゆき氏をして大好きと言わしめたエピソードがある。

――

先生が空の壺①に、最初に岩、次に小石を入れる

先生「この壺②は満タン?」

生徒「満タンだと思います」

そこで先生は岩と小石の入った壺に砂を入れる。

先生「この壺③は満タン?」

生徒「さすがに満タンだと思います」

さらに先生は岩と小石と砂の入った壺に水を入れた。

無事に壺④は満タンになった。

――

 便器上通し番号を振らせてもらった。この話は「詰め込もうと思えば意外に詰め込めるよ」なんていうモーレツ社員的逸話にもとれるけ、ぼくは「人生には取り返しのつかないことがあるよ」というのが神髄って思ってる。③の状態になってしまったら、どうやっても岩は入らないから。


 みんなも、「老人は何を言われても頑固で偏屈」ってイメージがあると思うけど、それはすでに高校生のうちにも起きてるんだ。人によって差異はあるけど、例えば初恋愛を柔軟な高校生のうちに経験するのと、いろいろこじらせた40歳でするのとでは全く違う。



【旬は高校時代】

 つらつら話してきたけど、ここで僕が言いたいのは、高校生のうちにしといた方がいい経験があるということ。ショート動画をみたり家でゲームしたりエロコンテンツでオナニーするっていうのは、正直何歳からでもできるし考えに影響してこない。

 でも「恋愛」とか「社会にどんな人がいるか」だとか、「どうやって生きるべきか」「友達がいる事の楽しさ」なんていうのは今が旬。


 そういう経験を高校生で得ておくか、それともこじらせてしまうかで、君の一生の創作物の質が変わってくるだろうし、小説を読んだときの受け取り方の良し悪しが決まる。今はいろいろ楽しいだろうけど、今いい経験をすれば、将来もっともっと楽しくなる。

 それってすごくない? 楽しそうじゃない? だからこそ、その為にいましか出来なさそうなことを逆算して、経験するんだ。高校生の旬を掴み取るんだ。


 何をすればわからないって人は、とにかく学園生活を満喫したらどうだろうか? そもそも考えてみれば、社会に出てから学園生活なんていうのは絶対に追体験できない。

 数百数千の規模の同年代の子たちと、一日の大半を一緒の空間で過ごして、恋愛出来ちゃう。

 しかも施設面積も広大で、思い切り体を動かせる校庭や多種多様な教室、図書館、プール、食堂だってあるかも。そんな施設、社会にあるかい?


 それこそ、小説友達がいるなら、絶対に一緒に「カクヨム甲子園」に参加しよう。普段は読む専の人も、筆をとってみるといい。

 それで表彰されれば万々歳だし、別に上手くなくていい。「カクヨム甲子園」に参加したという経験と、それについて一緒に学校で語らった思い出は心に強く残る。

 かく言う僕も、その当時友達と一緒にカクヨムをやっていた。お互いがお互いの文章を読むのは何だか気恥ずかしかったけど、いまでは夕焼け色の思い出になってるよ。


 最後に一つだけ、ヒントを書いておこう。

 校内に桜の木があるとする。春のうららかな昼休みに、ふと外でお弁当を食べようと木陰に腰かけると、あたたかな陽の光と程よい満腹感に、得も言われぬ多幸感に満たされる。そこに仲のいい友達がやってきて、一緒に語らう。


 オトナになったら、絶対この経験がモノをいうんだ。苦しくなったときは桜の木の下でご飯を食べる。あるいは友達と外でお話しする。

 そしてこの経験が幸せや友情と繋がるから、創作で「希望、友情」と言ったシーンでこれに似たものがぱっと浮かんで来るし、作品を読んでいる時にも「桜、友情、春」が出てきたら特に印象深く心が揺さぶられるだろう。


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