秘密

玉置真希

予備知識

「ねぇ~。本当に行くの~?肝試し」

助手席の後ろに座るロングヘアーの女は、後部座席から甘えたような声を出し、運転席と助手席に座る男二人に声をかけた。

助手席の赤い髪をした男が首をひねり後ろを向くと、にやにやとした顔で答える。

「なんかさ、コイツがすげぇ~怖い場所知ってるんだって」

と、運転席の男を指さし言った。

「怖い場所?心霊スポットとか?私そういうの信じてないんだよね」

運転席の後ろに座る眼鏡の女は、つまらなそうに窓の外に目をやった。心霊などの類に懐疑的らしい。

「怖そうだけど面白そうじゃん!どんな所なの〜?」

ロングヘアーの女は、アトラクションに行くかのように楽しんでいる。

「俺も詳しい事は聞いてないんだよな。なぁ、何処なんだ?廃墟?ダム?トンネル?」

赤髪の男は運転席に座る男に聞いてくる。

「ん~。そういうのとはちょっと違うかな」

運転席の男は少し困ったように返事をする。フロントガラスにポツポツと水滴がつく。さっきから、降ったりやんだりして安定しない。運転席の男は、チラリと暗い夜空を見上げる。

「違うのか?じゃあ、何処なんだよ。教えろって」

「そうだよ〜。少しは知っときたいじゃん」

赤髪の男とロングヘアーの女の視線が運転席の男に注がれる。運転席の男は、口の片方(窓際の方)を小さくあげると

「大丈夫。きっと、君達の恐怖と好奇心を満足させる場所だから。でも〜そうだね。行く前の予備知識は必要だよね。これから行く場所について、俺が知ってることを話すよ。一人の男が、居酒屋で飲んでた時の話なんだけどさ・・」

男は右ウインカーを出し高速に乗る道を選びながら話し出した。

眼鏡の女は、サイドミラーに映るその男の表情をジッと見ていた。

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