第44話 ピノキオベル
「ほっほ。壮観ですね。ところで御神楽くん。それはスキルではないのですか?」
「違うよキッシー。こいつらが勝手に種の生存本能に従って跪いてるだけ。神に逆らおうなんて、下等生物には不可能だろ?」
物を投げたら上から下に落ちるように、そういう法則なのだ。少なくとも、パラベラムの神の力というものは、そういうものなのである。
むしろ、ここまで来たら権能と言っても差し支えないだろう。シャディアはあんまり好んで使っていなかったが、こいつらのように話を聞かない奴らを無理やり黙らせるのに非常に便利だ。
「一つ確認だキッシー。新法は予定通り明日から発令されるんでいいんだよな?」
「えぇ。問題は、どういうふうにスキルを使った犯罪かを断定するかですが」
「そこは俺の魔法と────コイツを使う」
ごとり、と武器庫を開いてとあるモノを取り出す。
「ふむ。その道具は一先ず置いておくとして、どういった魔法でしょうか」
「まず、日本中を全て結界で覆う」
できるの?と思うかもしれないが、あまり舐めないでもらいたい。集中すれば魔力的パスを太陽系までなら伸ばせる男ぞ?我。
日本を結界で覆うなんて、朝飯前だが。
「その結界は、スキルを使った犯罪に対して反応するようになってな。現在の日本の犯罪法に違反するような行動を取ったやつをな、強制的にムショ送りにするんだ」
「ほほう。それはまた都合の良い効果で」
「都合よくするのが魔法なんだぜ。まぁスキルを使わない犯罪に対してはノー効力だけど」
そのために、全国に俺が鍛えた警察の人が配備されるわけだけど。あまり俺が仕事を取るのも……ねぇ?
「それで、結界が反応してムショ送りにした奴だけど、そこで取り調べをするだろ?ほんで、絶対に『遊びのつもりで~』とか、『犯罪を犯すつもり無かった~』とかごねるアホが出るだろ?」
「まぁ出るでしょうね」
「その時、役に立つのがこの『ピノキオベル』だ。異世界でもちゃんと役に立ってたぞ」
「ほう。これがですか」
20cm程の大きさがあるゴングみたいな形をしたベルを持ち上げるキッシー。
「本場ではうんたらかんだらゴスペルとか、クソなげぇ名前だったから、俺が勝手にピノキオベルに改名してる。嘘をついたらその鐘がなるんだ」
鐘を鳴らすための木の棒が、ピノキオの鼻みたいだから『ピノキオベル』。
「なにか適当に嘘言ってみ?」
「ではでは、僭越ながら………えー、わたくし、喜志山昇が昨日食べた夜ご飯は、うな重である」
チーン…………
「………何食べたの」
「10秒チャージ系のヤツです」
「もっといいの食べなよ!!!!!」
ダンジョンとかスキルとか色々現れて大変だとは思うけど、流石にそれはどうかと思うよ!
「さて、わたくしへのご褒美は全ての心労が降りた後でするとして……この際、色々と法改正も行いますか」
「いいんじゃない?そこら辺にいる汚職議員とかまとめてクビにすれば?」
「ほっほ。いい提案ですね。ついでに、不法滞在中の移民も送り返しますか」
「エエヤン」
前首相負の遺産も、この際纏めて国に帰ってもらおう。日本は日本人の国だゾ!
「日本にいても人権剥奪されるだけだしな。ワンチャン自国の方がまともな待遇受けれるんじゃない?」
多分ここにとどまっても、もっと酷いことされるだけだぜ。あの刑務所には脱走防止用に、強さ限界まで引き上げたゴーレム達が警備してるしな。
「キッシー」
「何でしょう」
「今、間違いなく日本はこの移ろいゆく世界で、頂点に立つ国だ」
急に現れたダンジョンと、対抗するために得た力。日本ではそれほど騒ぎにはなっていないが、海外では既に色々と大事件が起きているらしい。
さすがはと言うべきか、まぁやるだろうなと言うべきか。海外の政府人はその対応に追われてあまりダンジョンに対する措置がなされていない。
「アンタは、いずれ世界から頭を下げられる立場になる────気張れよ、アンタのスキルはそのためにある」
「えぇ。あなたと────そして、日本国民の期待には応えますとも」
名前:喜志山昇
種族:人間
レベル:3
攻撃:2
防御:4
魔力:0
知力:24
耐性:7
素早さ:4
スキル:統制
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