第28話 女神
俺はその目で見ていないため、動画でしか確認していないが、あれは確実に女神だ。
・んえ、女神様!?
・なしてこんな所に!?
・……改めて見ると
・あぁ、ふつくしい……
・やっぱ美人だよなー女神様。カメラ越しでこれなんだから、リアルだと超やばいんだろうな
赤色の髪を靡かせながら、胸の前で両手を握っていた女神様。ぱちり、とその水色の瞳と目が合うと、ニコりと微笑みそのままこちらに落ちてくる。
「っ、とと」
その際に、両手を広げたため着地点にしっかりと待機してそのままくるりと半回転しながら女神を受け止める。
「────ずっと、あなたの事を見てたわ」
おや?何だか動画の時とちょっと話し方が違う?
「私の名前はフェイルノート。勇者様、あなたの名前は?」
「……各務。御神楽各務だ。それにしても、そっちでも勇者の名が浸透しているようだな」
「地球の事は、魔王と対抗しながらもチラチラと様子は確認しているの……あのお披露目、すごくかっこよかったと思うわ」
「そうか。女神にそう言われるのは嬉しい……ところで、地球に現れた時と口調が違うようだが?」
「へ?……あぁ、あれは体裁みたいなものよ。素の私はこっち」
あぁ、そういうことね。納得。向こうの女神とそんなだったからな。威厳、示さないと大変だもんな。
・この二人いつまで抱きしめあってんの?めちゃくちゃ羨ましいんだが
・そこ変われー!各務!
・独り占めすんなー!
・変わったところで、ああいう風に美人と目と目を合わせて会話できるか?俺は無理
・俺も無理だ
・しかし、体裁とか言って大丈夫なのか?
・たしかに。これ全世界配信だぜ?
「それで、どうして俺の目の前に?」
「あなたがここを攻略してくれたおかげで、このダンジョンを私の力で封じておく必要もなくなったから、そのお礼に。まさか、こんなに早く難易度Sをクリアするとは思わなかったわ」
「規格外だしな、俺」
「たしかに」
くすり、と笑うフェイルノート。男の理想を体現したかのようなその顔で笑われ、こんな状況でも「この女神めちゃくちゃ可愛いな……」と場違いな感想を思ってしまう。
「────あなたに、伝えたいことがあるの勇者様。時間が無いから、手短に話すわ」
「時間が無い?」
「えぇ。私がこうして顕現出来てるのも、ダンジョンを封じ込める必要がなくなって、その力を回収する前に使っているからなの。だから、勇者様。私が本格的に、この地球でサポートが出来るように、私がもっとも危険と判断した三つのうちのどれか一つでいいわ。そこを早急に攻略して欲しいの」
背中に回している手を、虚空へと向けて翳すフェイルノート。すると、ステータス画面と同じようにウィンドウが空中に投影され、三つのダンジョンが映し出される。
1つは、アメリカで確認されているダンジョン。1つは、オーストラリアのエアーズロック付近のダンジョン。そしてラストは、日本で確認されているダンジョン。
どれもが、難易度SSのレベル3000オーバーの推定鬼畜ダンジョンだ。俺だったらぶっちゃけ余裕だろうが、俺がいなかったらここを攻略するのに何年かかるか。
「ここから近いのは……これね、日本にある『百鬼夜行』」
「名前から想像するに妖怪でも出てくるのか?」
「妖怪……というのはまだ地球の文化に疎いから分からないけれど、出てくるのは鬼よ。いくらあなたが強いといっても、流石に………え、なにこのステータス」
「あ、今俺のステータス覗き見したな」
他人には見えないはずのステータス。しかし、この能力を授けたのはフェイルノートであるため、俺たちのステータスを覗くなんて他愛もないことなのだろう。
「え……計測不能……?えぇ………?」
「俺のステータスを見た上で、この質問を投げるぞフェイルノート────俺は、この世界に現れた魔王を倒すことは可能か?」
困惑するフェイルノート。しかし、俺の顔を見た女神は、その顔をニヤリと笑わせると自信を持ってそう言った。
「──えぇ、あなただったら可能ね。なんなら私より強いし……」
サポート向きとはいえ、一応神なんだけどなぁ……と少しばかりしょぼくれるフェイルノートの頭を、ポンポンと慰めるように叩く。俺はあまりにもイレギュラー過ぎるから、気にしないでよろしい。
「……まずっ。私がこの状態維持できるの残り数分しかない……。えっと、何か聞きたいこととかあるかしら?」
「え、うん。めっちゃある」
「めっちゃ!?えっと……出来れば五つくらいでお願い!」
それじゃあ質問コーナーといきますか。
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忘れていましたが、第四話のかつての仲間を想い返していたシーンですか、この先の物語の都合上により、神官→ヒーラーさんに変更しました。まだまだ身元不明の勇者御一行。
プロットなんて考えてないから。ごめんね。
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