異世界帰還勇者は現代でも『勇者』と成る
結月アオバ
異世界勇者は勇者と成る
一章 御神楽各務は勇者である
第1話 女神の神託
『地球の皆さんごめんなさい────どうか、魔王を倒してください』
その言葉から突然始まった動画は、数々の修羅場をくぐり抜けた歴戦の戦士である俺でさえもビックリさせた。
某大手動画投稿サイトに表示されている、投稿日付は6月18日────つまり、三日前である。
自身のことを神と自称する、空中に浮かぶ巨大な女性は、これから地球に起こる『変化』を三つほど説明した。
一つ、この地球に『ダンジョン』と呼ばれる摩訶不思議な存在が現れるようになると。
二つ、それに合わせて対抗する力を人類が持つようになると。
三つ、この世界に降り立った魔王が地球を蹂躙し始めると。
この女神様は、その魔王と敵対関係にあり、この世界を滅亡から救うために手助けをしに来たらしい。
ほーん、と思いながら20分ほどの動画を見終え、俺の反応を待っている友人へと目を向け、イヤホンを外し────
「え、何これ知らん……こわ」
「お前マジで言ってんの???????」
うん。知らんもんは知らんし、俺そもそもその日地球にいなかったし。
そう言うと、友人────
霧矢と俺────
小中と九年間、同じクラスで現在高校で三年生なのだがその三年間も一緒。人生の三分の二くらいコイツと一緒にいる。
そんな俺たちが仲良くなるのも不思議ではなく、今や親友と言っていいほどの中ではあるのだが、今まで見た事のない顔をしている。
「だから、さっきもいったろ?お前だから正直に話してるんだ」
「…………まぁ?確かに?三日間音信不通だったのは普通に心配したし?そんでやっと連絡着いて会えたと思ったら、黒髪から銀髪にメイクアッ~プしてるし?女神の神託もあったし?」
「最後関係ねぇな」
地球に出てきた神は見覚えなかったし。
「でも、それはさすがに嘘だよ各務。異世界に行っていたなんて」
「唐突のフリ○レンやめろ」
声マネするのもちょっとウザイ。なんで少し似てるんだよ。どこから声出した。
そうなのである。俺が世間から『女神の神託』と呼ばれているのを知らなかったのは、それが起こる前に異世界に勇者として召喚されていたからなのである。
「………そこまで言うんならさ、証拠出せよ証拠」
「証拠?どんなのがいい?あんまり派手なのは辞めろよ」
ここ教室だからな。俺の髪が唐突に変わったことで若干の注目を集めているが、このことをあまり広めるつもりは無い。
まぁ、こんなことを言える友達がこいつしか居ないという悲しい現実があるのだが。
「各務に任せる。魔法とかは配られているスキルの中にあるっていう話だし」
「うーん」
何にしようか。と思いながら目線を横に向ける。すると、ぶおん!と音を響かせながら紫色のウインドウが出てくる。
異世界にいた頃にはなかった────つまり、女神から与えられた『対抗する力』というものの一つで……在り来りに言うなら『ステータス画面』とでもいうのだろうか。それを見つめる。
名前 :御神楽各務
種族 :???
レベル:
スキル:いっぱいありすぎて分かりません!
仕事しろよ。と思わないでもないが、しょうがないとも思う。異世界にいた頃はとにかく生き残ることに必死で、色んなこと覚えたからな。
……あれでいくか。見た目的にも分かりやすいし、俺と同じオタクで、厨二心を擽られるやつなら満足するだろ。
左目を閉じて、静かにするように唇の前に人差し指を立てる。こくり、と頷いたのを確認してからゆっくりと目を開いた。
「なっ………!おまっ……!!!かっっっっっ!!!!」
『なんだお前それ!!!かっこよ!!!!!』という声の無い叫び声が聞こえた気がした。
「うーし、ホームルーム始めるぞー。お、御神楽、髪染めたのか?似合ってるぞ!イッケメーン!」
「あ、先生。これ地毛になりました」
「おう、地毛な──────え?地毛?」
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