ドラゴンと姫

明空 希歩

ドラゴンと姫

 空には星座が広がっていた。

 少女が、そのうちの一つを指さす。


「見て、りゅう座よ。アレは西洋のドラゴンをモチーフにしているらしいわ」


 少女の指が、空をなぞるように動いていく。

 それを眺めていても、少年には少女がどのように線を描いているのか、まるで想像できなかった。

 何故なら、りゅう座に明るい星が少ない為、どんなに少女の指を目で追っても、途中で見失ってしまうからである。


「私ね、今度その付近へ行くの。NGC6543を見に行くのよ」

「ずいぶん遠そうだね。君がそこへ辿り着くころには、たくさんの時間が過ぎているはずだ」

「でも、それだけの価値があるわ。あそこには未解決の問題が山積みですもの。それに、とても綺麗。キャッツアイ星雲とも呼ばれているらしいわ」


 少年は以前に見せてもらった、宝石のように美しい映像を思い出した。

 たしかに猫の瞳にも、見えた気がする。


「そうだ」

「うん?」

「もし私が帰って来れなかった時は、迎えに来てくれる? りゅう座を目指して会いに来て」


 少女のお願いに、少年は迷うことなく頷いた。

 騎士になった気分だった。

 少年が騎士だとすれば、少女は間違いなく、お姫様だろう。

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