第7話 お義兄様とジャンボカフェを食べさせあって堪能しました

「ギャッ」

私に足を思いっきり踏まれて思わずお義兄様は叫び声を上げてくれた。

ふんっ、私にいろいろ面倒事を押しつけてくれた罰なのだ!


「お前なあ、何をしてくれるんだ。全部お前のためにやってやったのに」

お義兄様が足を押さえて文句を言ってくる。

「何言っているのよ。後で彼らに文句を言われるのは全部私なのよ」

私が文句を言うと、


「何言っているんだ。こんな扱いを受けているんだから、帝国に帰ってくれば良いだろう」

「はああああ! 私はこちらに来る時からこの地に骨を埋める覚悟できているのよ」

お義兄様の言葉に私がさらに切れると、


「えっ、そんな、俺は認めていないのに!」

「私の人生、お義兄様に認めてもらう必要はありません!」

お義兄様の言葉に私は更に切れたんだけど


「そんな……」

なんかお義兄様がとてもショックを受けているんだけど、なんで?


「あのう、エリーゼ様」

後ろからシャロットが私に初めて敬語を使って来たんだけど、


「ちょっと、どうしたのよ、シャロット! 敬語なんか使って」

私が慌てて聞くと

「いや、だって、帝国ではあなたをお貴族様でも様付けで皆呼んでいるって……」

恐る恐るお義兄様を伺うようにシャロットが言うんだけど、


「お義兄様。勝手なことを言わないで」

さすがの私も切れて義兄を見た。


「いや、でも、エリ、事実だし」

「事実だろうがなかろうが、私は友達に様付けで呼ばれる気はありません」

私はお義兄様に言い切ったのだ。


「判ったわね。二人共。お義兄様がなんと言おうと、私に様付けで話しかけたら絶交だからね」

私の剣幕に驚いたのか思わず二人は刻々頷いてくれた。


それから怒った私はお義兄様と話さなかったんだけど、


「エリーゼさんっていつもこんな感じなんですか?」

私を気にしながら恐る恐るシャロットがお義兄様に聞いていた。


「シャロット! さん付けも禁止」

私が注意すると、


「何言っているのよ、エリーゼ! 今は御兄様の伯爵様と話しているんだからさん付けでいいでしょ」

「えっ、そうなの?」

シャロットに言われて横のミシェルとを見ると、ミシェルがコクコクと頷いてくれた。


「そう、怒ると手がつけられなくて」

お義兄様がなんか余計なことを言ってくれている。


「そうなんですね。そう言えば、一度怒った時は1日中、話もしてくれませんでした」

「1日なら良いほうだよ。俺なんて1週間も口聞いてもらえないことあったからな」

「エリーゼさんって根に持つんですね」

「ああそうだ」

この二人何を勝手に私のことを話してくれているのだ。


私がムッとして二人を見ると


「エリ、お前、アドルフ殿下とうまくいっていないんだろ」

お義兄様が私に確認するように聞いてくれるんだけど。


その横でシャロットとミシェルがやらなくてもいいのに大きく頷いてくれているんだけど。


ムッとして二人を睨みつけるも

「エリーゼ、ここは強い伯爵様にちゃんと言っておいたほうが良いわよ」

シャロットが当然のように言ってくる。


「そう、当然そうだ。兄だからちゃんと把握しておかないとな」

お義兄様が頷くんだけど、でも、お義兄様に正直に話したら怒り狂ったお義兄様の前に、こんな国本当に一瞬で吹き飛んでしまうのだ。何しろお義兄様は他国からは狂犬将軍と呼ばれて怖れられているそうだから……


「アルナス様。席が空きました」

そこへ丁度給仕の人が呼びに来てくれたのだ。


これ以上お義兄様にばらされたらこの国の危機だ。

私は渡りに船とばかりに二人と分かれてお義兄様と席に案内されのだた。



中ではカップルが皆、巨大なパフェの入った容器を二人してつついていた。


「ああ、これこれ、これよ」

私はみんなの食べている容器を見ていった。


「お客様も当店自慢のカップル限定ビッグカフェで宜しいですか」

「はい。お願いします」

私はお義兄様の返事も聞かずに注文していたのだ。


お義兄様は呆れていたけれど、ここは無視だ。それに先ほどの王子殿下の話も無かったことにして……というか無視した。


そして、待ちに待った巨大ジャンボパフェが出てきたのだ。


「これは凄いな」

お義兄様が呆れて言ってくれた。


「お義兄様。甘いものいらないのなら私が全部食べるから」

私が当然のように言うと、


「お前、これだけ食べると太るぞ」

お義兄様がとんでもないことを言ってくれるんだけど……


「私は大丈夫よ」

「明後日卒業パーティー何だろう。衣装が入らなくなっても知らないぞ」

お義兄様は聞きたくないことを聞いてくれた。


第一王子殿下は私をエスコートもしてくれないし衣装も送ってくれなかった。そう言えば着ていく衣装はどうしよう。最近アリスから少し太られましたかと言われていたけれど、まあ、義父や祖父から持たされた衣装は山のようにあるから、一着くらいちゃんと入るだろう。何しろ婚約者に相手にされずに多少ストレス太りしたのだ。働いているレストランの試食がおいしくてつい食べ過ぎたというのがあるかもしれないけれど……


「ふんっ、良いのよ。別に」

私はそういうと、スプーンをアイスクリームの山に突っ込んで大きくすくった。


「おいおい、そんなにたくさん取らなくても、俺はそんなに食べないから」

お義兄様が慌てて注意してくれたが、私はやけだった。


大きな口を開けてそれを口の中に放り込んだのだ。


うーん、美味しい!


でも、少し大きすぎたかも。


私は四苦八苦して飲み込んだ。


お義兄様はそれを呆れて見ていたが、首を振ると今度は小さくすくったアイスを私の口の中に入れてくれたのだ。


「美味しい!」

今度は小さかったのでアイスは口の中ですぐに溶けてくれた。

凄い、このアイス、とろけるアイスなんだ!


感激した私にお義兄様はさらにもう一口放り込んでくれた。


私もお返しに一口大きめにとってお義兄様の口の中にいれる


「どう、美味しいでしょう」

私が言うと


「本当だな」

お義兄様はそう言いつつ、私の口の中にもう一口入れてくれた。


これも口の中でとろけてくれた。


ここのパフェは本当に美味しい。


それに、お義兄様も優しい。


さっきのごたごたも、元はと言えば私の事を思ってやってくれたことなのだ。

王子の事を聞いてくれたのも、私のことを心配してくれたからだし……


私はこんな義兄がいて本当に良かったと食べさせてもらいながら思ったのだ。


黄色い声が時たま周りから上がっているなとは思っていたけれど、それが私達を見ての声だったなんて思ってもいなかったのだ。

「あなた達、甘すぎ。貴方のお兄様のあなたを見る視線が本当に甘かったし、本当に兄弟なの?」後でシャロットに散々嫌味を言われたけれど、シャロット達の方こそ、カップルだったんだから甘い時を堪能すればよかったのに……


私は周りの事なんて全く関係なく、おいしいパフェをお義兄様と食べられてとても満足したのだった。


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