変化

「あのハンサムな人はだあれ?」


 開口一番、ルーシーは言った。


「誰の事? なんて言わせないわよ。ここまで、あの人に馬で送ってもらってたの、見てたんだから」


 ルーシーは流行を追いかけたり、噂話をしたりするのが大好きだ。

 シャーロットには何が面白いのか分からないが、ルーシー本人のことは嫌いでない。


「ジェラルドなら、ただの隣人よ」


 もちろん、これでルーシーが納得するはずはない。仕方なく、シャーロットは今日の出来事を全て話した。


「何てロマンチックな出会いなの! その上、彼とってもハンサムだわ。黒髪は地味だけど、尖った顎や、鋭いけど優しく光る瞳が素敵!」


 ルーシーはふっくらとした頬をバラ色に染めてうっとりと言った。


「馬鹿な事言わないで。それより、明日着る服を貸してくれない?」


 持ってきたドレスや靴は馬車と共に海に沈んでしまった。


「もちろん良い……待って、タダで貸すわけにはいかないわよ。私の質問に答えて」


「いいわ」


 ルーシーはしてやったりという顔で腕を組んだ。


「正直に言って、ジェラルドのことどう思ってるの?」


「ルーシー!」


 ルーシーは縁結びが大好きな事でも有名だ。


「服を貸して欲しいんでしょ?」


 シャーロット自身にも自分の気持ちが分からなかった。


 シャーロットはいつも自分の心を閉ざし、誰にも心を許さずに生きてきた。

 しかし、半分宙に浮かんだ馬車からジェラルドの目を見つめた時、シャーロットは彼を信じることができた。

 それがどれほど危険な事か分かっていたけれど、彼が信じる勇気をくれた。

 そしてジェラルドの腕の中で、自分が地面に立っていると気づいた時、どれほど安心したことか。


 だが、その気持ちをどう表現すれば良いのか分からず、結局こう言った。


「最初に話しかけられた時は、だらしない女好きかと思っていたわ。でも、そうでないことが分かった。優しくて、行動力のある方だわ」


 幸い、ルーシーはその答えに満足げな表情を見せた。


「それなら、お礼とお詫びを兼ねて、何かすべきだわね」


 ルーシーは得意げな笑みを浮かべた。

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