第22話 サンタクロース②

A「さっきBちゃんは、サンタは住居侵入してる、って言ってたけどさー……でも、実は住居侵入罪の成立要件って、『正当な理由がないのに他人の家に入ること』なんだよねー」

B「ええ。だから、勝手に他人の家に侵入してプレゼントを置いていったらサンタには当然、住居侵入の罪が……」

A「でも、『クリスマスにサンタがプレゼントを置く』のって……実は『正当な理由』になったりしない?」

B「はあー……?」


A「クリスマスっていうキリスト教にとって特別な日に、キリスト教の聖人のサンタクロース――聖ニコラウスが、迷える教徒たちに贈り物をする……これって、キリスト教にとっては大事な宗教行事で、『正当な理由』でしょ?」

B「だけど、私は別にキリスト教徒じゃないし……」

A「でも、もらえるならプレゼントはもらいたい、って思ってるでしょ?」

B「そ、それは、まあ……」

A「だとしたら、それが宗教上の意味があることだったなら、ある程度は受け入れるしかなくない? もともと日本が、昔は存在しなかった『クリスマス』っていう海外の宗教イベントを、自国に取り入れさせてもらっている立場なわけだしさ」

B「そ、そう……なのかしら……?」

A「そうだよ。プレゼントはもらいたい、でも、その方法は受け入れたくない、って。それはちょっと、都合が良すぎるよ。プレゼントをもらいたいなら、クリスマスっていう文化を全部取り入れる。逆にそれが出来ないなら、クリスマスに関わる全てを取り入れないのが正しいあり方だよ」

B「そ、そんな……私はただ、知らないおっさんに勝手に部屋に入ってきてほしくないだけなのに……」


B「って……や、やっぱり無理よ! そんなの、法治国家として正しくないわ! どんな宗教上の理由があったとしても、他人の家に勝手に入ったら犯罪! これが、日本国憲法のルールよ! だからサンタも日本に来たのなら、日本のルールに従ってもらうわ!」

A「おお、粘るねー?」


A「でもさー。それはそれとして……残念ながらサンタクロースは、日本の法律じゃ裁けないんだよねー」

B「な、何よそれ⁉ よなよな住居侵入を繰り返す変質者のおっさんを、裁けないわけがないでしょう⁉」

A「だってサンタクロースって、空飛ぶソリに乗ってフィンランドから来るんでしょ?」

B「ま、まあ、諸説ありそうだけど……一般的には、そういう感じでしょうね」

A「実はさ……国際線の飛行機の中で犯罪が行われた場合って、その飛行機が所属している国の法律が適用されるんだって。つまり、空飛ぶソリも飛行機の一種と考えると……フィンランドから来た空飛ぶソリで他人の家に侵入したとき、サンタに適用されるのは日本じゃなくてフィンランドの法律なんだよ」

B「そんなこと言い出したら、パスポートとか入国審査とかはどうなってるの、って話になりそうだけど……」

A「サンタを主要観光産業にしているフィンランドの法律が、サンタを犯罪者にするわけがない。ってことは……サンタがどんなことをしても、日本では誰にも裁くことは出来ないんだ……。住居侵入はもちろん、もっと凶悪な犯罪も……。そう、殺人でさえも……。ふふ……ふふふふ……」


B「ちょ、ちょっと⁉ いつの間にか、ホラーになっちゃったじゃないの⁉ だ、駄目よ! この話は、もうこれでおしまい! 今度は私が話すから!」

A「ふふ、Bちゃんは相変わらずの怖がりだなー」

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