第20話

B「私は、本当に……あなたに嫉妬しているの。あなたの才能を、あなた自身のことを、すごいと思ってるの。だから、そんなあなたが、私なんかと一緒にいて……足を引っ張ってるんじゃないかって……。私があなたの価値を、下げてしまっているんじゃないかって、思って……。だから、だから……あなたの前から消えようと……」

A「ほら……やっぱり、空回ってる」

B「そ、そうよ! だから、私はいつだって、あなたの前では空回ってばっかりで――!」

A「Bちゃん……私さ、夢があるんだ。将来の夢」

B「……え?」

A「つーか、最近その夢が出来た、って言うべきかな。そのためにずっと勉強もしているし。来年受験する大学も、それに関連するところを探し始めてる」



A「私、出版社……ていうか、小説家さんとか漫画家さんを支える、編集者になりたいんだよね」

B「いきなり、何の話よ……?」

A「分かんない? 分かんないかな? 私がこんな夢を持つことが出来たのは、全部……Bちゃんのお陰なんだけど?」

B「何、それ……」


A「Bちゃんと出会って、Bちゃんといろんな変な話をして……自分一人じゃあ思いもよらないような話を聞いてるうちにさ……。『ああ、世界にはこんな面白いことを考える人がいるんだー』って。『誰かをこんなに楽しい気分に出来る人がいるんだー』って思って……。こんな面白いことを考える人を、支えたい……こういう人がもっと輝ける手伝いがしたい……って思うようになったの」

B「……」

A「だから……だから……さ」


A「Bちゃんは私のことをすごいって思ってくれて、嫉妬した、なんて言ってたけどさ……そんなの、全部逆だよ。私の方が、Bちゃんのことをずっとすごいって思ってたんだよ。私に夢を見させてくれた、Bちゃんにずっと憧れてたんだよ……」

B「そ、そんなの……」

A「嘘じゃないよ」


A「私は、物語に出てくるような完全な『正直者』でもないし……何でも出来ちゃう万能な『女神様』でも、清廉潔白な『天使』でもない。でも……Bちゃんのことで、嘘なんてつかないよ。

だって、だって……」


A(Bちゃんのことが大好きな親友)「Bちゃんと、ずっと一緒にいたいから……。これからもずっと、バカみたいな話して、笑い合っていたいから……。Bちゃんが、大好きだから!」


B「バ、バカみたいな話……って。

だから、言ってるじゃないの。私は、ずっと辛かったって……。あなたに飽きられないようにって、そのバカみたいな話を考えることに、必死で……。

……だけど、」


B(Aが大好きな大親友)「私だって、同じよ! 本当はあなたとずっと一緒にいたいわよ! あなたが……好きよ! そんなの決まってるじゃないの!」



A「……うん。ありがと……Bちゃん、これからもずっと一緒だよ!」

B「こ、こっちこそ……あ、ありが……」


B「って、ちょ、ちょっと⁉ こんな公衆の面前でいきなり抱きつくなんて、何考えて…………あ、あなた、指がポテトの油まみれじゃないのよ⁉」

A「……ごしごし」

B「こらー! 私の服で、油を拭くんじゃないわよー⁉」

A「え? 『服』だけに『拭く』って……? あれ? ちょっと会わない間に、お笑いのクオリティが落ちてない?」

B「い、今のは、偶然で…………って、もう! そうこう言いながらも、手とか顔を拭くんじゃないってばー!」

A「えへへ」

B「ああーっ! もおーうーっ!」


A「へへ……へへへ…………Bちゃん……本当に大好き……だよ」

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