第6話

A(次の日。

昨日のことは、大したことじゃない。たまたま、あの子の機嫌が悪かっただけ。そう思っていた。でも……)


A「……いないし」


A(部活には入ってなかったけど、すぐに家に帰りたくなかった私たち二人は、放課後はいつもこのマックで、下らない話をして過ごすのがお決まりになっていた。

でも、彼女は今日ここには来なかった)


A「久しぶりだな、一人は……」


A(昔の私は、ずっとこうだった。ずっと一人で、このマックで時間を潰していた)


A「そうだよ。彼女と出会う前に、戻っただけ……」


A(私は別に、友だちがいないわけじゃない。むしろ、普通の人より多いくらいだと思う。でも、この時間――放課後に家に帰らずに時間を潰しているときに、一緒にいてほしいと思う友だちは、今までいなかった。だから私はずっと、一人で過ごしていた。それでいいと思っていた。それが、一番いいと思っていた。

……なのに、気づけばいつのまにか彼女がそばにいた)


A「……ああー! なんか思い出したらムカついてきた!」


A(彼女は、私の知っている他のどんな人とも違っていて……だからこそ、今みたいなときの私の気持ちに、ちょうどピッタリはまったんだと思う)


A「だいたい、昨日の私、何も悪くなかったよね⁉ いつもどおり下らない話してただけだよね⁉ それなのに、急にキレたりしてさー! もとから変な子だとは思ってたけど……昨日は特にだよ! もう、やってらんないよ!」


A(他でもない彼女だったから、そばにいてもいいって……そばにいてほしいって、思えたんだ)


A「前から私が、バカにしてたって⁉ そ、そうだよ! だってあの子、いっつも、わけわかんない変なことばっかり言ってるんだもん! 変な子なんだもん! だから、私みたいに普通の子は、彼女のことをバカにするのなんか、あ、あ、当たり前……」


A(なのに……なのに……)


A「……そんなわけ、ないじゃん」


A(どうして……こんなことに……)

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